ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その12
ケイコ



「おはよう、ケイコちゃん。今日は、バイトのあと友達と約束だよね」

アキラが洗面所から顔を拭きながら出てきたわ

私は布団を押し入れに閉まっているところだ

「おはよう~。そうなのよ、南玉の新しいトップ二人とね…。
展望公園でさ。だから、帰りはアキラの方が早いかな…」

「了解!ゆっくりしてきなよ。夕食は帰ってきてから適当にさ…」

もう新婚さんだよね、これ…(苦笑)


...



「アキラも明日だっけ?事務所の人と会うの…」

「うん。バイトの前にね、赤坂の事務所に直接行ってくる。たぶん、条件面や今後のスケジュールとか、具体的な打合せになると思うよ」

「頑張ってね。でも、なんかとても嬉しいよ。私がダメにしたプロデビューがまた叶うんなんて…」

アキラは着替えをしながら、クスクス笑ってるけど…

私は目頭が熱くなりかけてる

だって、そうだよ

夢みたいだって

”あの夜”…、大阪のオーディションを阻止されて、ギター破壊されて、クスリ打たれて…

アキラ、絶望の淵に立ちすくんでいたはずだよ

まさか、こんなに早く再びチャンスが巡ってくるなんて…

「きっと、逆髪神社のお守りが効いたんだよ。ケイコちゃんの”陳情”でさ(笑)」

アキラはそう言ってくれたけど、実際は天理さんのおかげだよ

あのギターの先生には感謝、感謝だ

でも今、アキラのギターはないんだよね…


...



私は新しいギターを買いに行く話をした

こういう状況なら、すぐにギターが必要だろうし

「あのさ、バイト始めたばっかで、まだアキラのギター代たまるまではもう少しかかると思うんだ。だからさ、この前銀行に預けた”例のお金”から、とりあえず出して買いにいかない?そりゃ、きれいなお金じゃないけど…」

「…」

シャツのボタンをかけながら、アキラは無言でこっちを見てる…

「気分悪くしたかな…」

そうだよな…

コツコツ貯めたバイト代で、アキラへの感謝とお詫びとお祝いを捧げるって決めたんだもん

私、思わず前言取り消したくなったよ






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