ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その13
ケイコ



「実はさ…、赤子さんには、監禁された時にギターを壊されたこと言ったんだ。もちろん、麻衣やクスリのこととかには触れずにね」

「アキラ…」

押し入れの前で棒立ちしてた私は、アキラの方を向いてそう呟いただけだった

「それでさ、新しいギターは”彼女”がバイト代で稼いで買ってくれるって話もさ…。だから、しばらくはそれを待っていたいって。そしたら赤子さん、それまで予備のギター貸してくれるって言ってくれたんだよ。だからさ…」

アキラは優しい口調で話してくれた

穏やかな表情は、なんか意識して作ってくれてる感じだ


...



ここでアキラは押し入れの前に来て、私の左肩に手を乗せてね

それ、そっとって感じじゃなく、なんかポンというタッチ感だったかな

「やっぱり剣崎さんからのお金なんて、不純だよね。ごめん、アキラ。さっき言ったこと…」

アキラ、今度は私の顔を胸に抱き寄せてくれたよ

何も言わず…

ここからじゃ、この人の顔は見れないけど、不思議とその表情が頭に浮かんだ

それは、私が一番好きなアキラの顔だった


...



その後、朝食をとった後、私が洗濯してる間、アキラは掃除機片手にお掃除だ

そしてお昼前、アキラのご出勤を見送った

文句なし、どう見ても新婚さんだってば(笑)

私たちのささやかな一歩一歩…

二人の歩むその足音は、とてもよい響きとなって私の心に沁み込んでいく






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