ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その15
多美



祥子がいみじくも言ったよ

「私なんかさ、逆に麻衣と出会っていなかったら、今頃高校辞めてたよ。ヤツの伝手で1年ダブってた私がさ、埼玉校に移れたんだ。そんで、南玉のみんなとも、いい付き合いできた訳だし…」

祥子は当時、学校なんかほとんど行かず、フリーで暴れまわってたらしいからな(苦笑)

麻衣とは初対面で、いきなりタイマンの死闘を演じたって話は今や伝説だ

「…なのに、先生の評判も良くて、なんでも前向きで頑張ってたおけいの方はさ、麻衣と出会ってなかったら、今も部活に健全な汗流してたはずだよ。それこそ、その辺の女子高生と変わりなかったんだろうにな…」

祥子は南玉内では麻衣の側で、私らとは反目してた立場だったんだけどね

でも、おけいとは肌が合ってるようで、仲が良かったよ

だから、今のおけいの”境遇”には複雑な思いがあるんだろう…


...


「おーい!多美―、祥子―!」

あっ…!

おけいが走ってこっちに向かってくるぞ

おお…、相変わらず歩幅の広い、カモシカのような走りだ


...



「よー!おけい、久しぶりだなー、ははは…」

「祥子…、なかなか連絡できなくてゴメン。会えてうれしい…」

祥子とおけいはがっちり抱き合った

私は警察から戻ったおけいとは一度会っていたが、祥子とおけいは南玉を出てから数度会って、それ以来だろうからな

なんか、傍で見てても、じーんときちゃうわ


...


その後、3人はしばらく取り留めのない話で、盛り上がっちゃってね…

おけいの彼氏は年上で、なんだかプロのミュージシャン目指してる人とか…

凄いじゃん…

なにしろ私には、おけいの彼氏と言えば、あの”エロ男”テツヤってイメージが固まってたからね(爆笑)

おけい、その年上の彼とはラブラブで、新婚さんみたいな生活してるってのろけてたわ(苦笑)

とにかく、コイツが思いのほか元気なんで安心したわ

もっとも、おけいのことだ

私らに気を使ってるってことはあるかもな

で、先週からファミレスのバイトを始めてると…

さあ、その話の流れになったなら、ここらで”こっち”の話もしなきゃ…

私は、おけいを挟んで座っている祥子に目配りをした






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