ヒートフルーツ【特別編集版第２部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

清濁併呑/その１３
アキラ



「アキラー、プロ就職おめでとう！ささやかだけど、ケーキ一緒においしく食べよ！」

ははは…、もう嬉しくて感激して、宙に舞い上がりそうだよ

だって、”それ”だけじゃないんだもんなあ…

実は…、ここ数日で、新展開があった

ケイコちゃんの誕生日が近いこともあって、その日、オレたち二人が横田家に”招待”されたんだ

昨日、美咲ちゃんから電話で知らせが届いてね

これ、嬉しすぎてバク転もんだ

できないけど…


...



さらにだ…！

ケイコちゃん、高校卒業の資取得格へ具体的な道筋が提示されたんだよ

学校側が教育委員会に強く働きかけた結果として…

その土台は、兼ねてから広がっていた嘆願運動ってことで…

要は彼女の友達、ＰＴＡ、さらに横田家のご近所、妹の美咲ちゃんの友人関係とかが地道に動いてくれたおかげだ

それに、ケイコちゃんの抜けた南玉連合とかって集団も、彼女の働きかけで、麻衣が壊した”損壊個所”を修復できたみたいだし

災い転じて福となす、雨降って地固まる、七転び八起き…

ポジティブな格言が、オレの頭をポンポンと行き交っているよ

珍しいこった…


...



「これ、あの人のギターなんだ…。やっぱり赤いのか…」

ケイコちゃん、赤子さんから借りたギターと３０センチくらいのところからドアップの睨めっこで、さらりと言ってくれたよ

意識したギャクなのかわからないけど…


...



とにかく今日はケーキで酔った

そしたら、ケイコちゃんもほろ酔いなのか、なんとも突飛な提案が飛んできた

「アキラの実家に電話してみない？」

オレは躊躇したよ

照れ笑いだけで、まともな返事もしなかったよ（苦笑）

その顔を、彼女がニヤッとしながら覗き込んでくる

意地悪だな、おい…


...



楽しいひと時を過ごした夜、ケイコちゃんはすでに隣で寝息をたてている

愛しい彼女のかわいい寝顔…

さっきから３０分以上、クギ付けだよ、オレ

癒される…

でも…


...



そんな安らぎの時でさえ、頭の中からは、”例の懸念”が片時も消えることはないんだ

今、てんこ盛り状態だった障害や問題が、何とかいい方向に運んでいき始めている

不思議なもんで他が解決すれば、逆に”あのこと”の存在がどんどんクローズアップされてくるよ

それを考えると恐くなる

この先、この子と正式に結婚して、子供ができて幸せになったとして…

”あのこと”は、ずっと二人から消え去らないってことだろうか…

追川さんからの連絡はまだない…