ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ざわめき/その2
追川



「オイちゃん、例の相和会がらみ、他から耳にしたんだが、東西広域とお手々繋いじゃったってな。どうなってんだ?」

昼メシから戻った局長がツマ楊枝を咥えながら、俺の机にケツを乗っけて話しかけてきた

「そうらしいっすね。俺にもよくわからんですよ。何が何だか…。相和会はエイリアンですから、極道界の」

「ふん、すっとぼけやがって。長い年月追っかけてきたんだろ、そのエイリアンを。相和会にペン持ってかれたからって、個人としてはアンテナ、ビンビンと違うか。お前さん、動いてんだろ?」

このタヌキ、お見通しかい


...



「そう聞かれたって、動いないってことっす。危険な目に遭いたくない、あなたも私も他の人間も…。そこは冒せません。でしょ?」

「ああ、全くだ。エイリアンなんかとはもうお近づき、絶対NG賜るわ。だがよう…、お前さんともあろうものが、まさかこの仕事で飯を食ってる自分の線引き、うっかりってことねえよな?」

この人は何気に鋭いや、やはり

「いつも憎まれ口の俺の”身”、心配してくれてるんですかね?」

「ああ、お前の”身”は身でも、”生活”の方のな。この商売、牙の磨きが疎かになると、すぐ伝わるんだ。読み手にはな。そんなの百も承知だろう」

「ご心配有難くってとこです、局長。肩たたきの時は遠慮なくどうぞ」

そう言って、俺は室を出た

「おお、”炎の追及者”、横浜を頼むぞ!」

でっかい声で局長が、皮肉を込めたお見送りの言葉だ


...



ここんところ、俺の筆がなまっていることの自覚は、無論あるさ

相和会を降りてから、俺の中で何かが変わった

ゲリラ雑誌の一線記者にとって、真実を暴くという追及者の牙が鋭さを失ったら、もはや俺の書く記事にパンチはない

長期取材を続けていた、”横浜児童虐待疑惑”の連載も、ここのところ無難にまとめてスパイスがさっぱりだったから、下世話な大衆誌”週刊実話キャッチ”の読者には”矢”が届いていない

局長あたりの目利きにかかれば、ごまかせないさ

”真実とはかけがえのないもの”

こんなフレーズを吐いてる時点で、”週刊実話キャッチ”の記事は無理だ

”今後”のことも、真剣に考える時期だと思っている


...



そして、今は個人としてライフワークの位置づけとなった、相和会関連について、また新しい情報が入った

今回の相和会がらみのクスリの一件で、横田競子と香月アキラ、それに本郷麻衣と一致する証言を行った、間宮康が刑務所から出てくる

相和会直系の旧建田組組員である間宮は、保釈要求が許可されたらしい

チンピラだが、”証言者”としてのこいつが戻ると、何かとざわめくぞ…





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