ヒートフルーツ【特別編集版第２部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪

ざわめき/その１５
砂垣



その後も大場からは、様々聞いた

今日はいつも以上に盛りだくさんだったな…

さて…、食後のドリンクも飲み干したし…、タイミングを見て席を立つぞ

俺は客と厨房を往復する横田競子を、さりげなくチェックしていた

向こうは俺には気づいていないようだし、要は接触さえすればってところだな

そして間もなく、絶好の間合いが来た

「おい！大場行こうや」

俺はテーブルのレシートをさっと掴んで、急ぎ足でレジ方面へと向かった


...



「あっ、すいません…」

食後の食器を運んで厨房に向かうウェイトレスと腕がぶつかった俺は、”彼女”にあやまった

「いえ、大丈夫です。失礼しました…」

そのウェイトレスは俺を振り返って、はきはきした口調で、お辞儀しながらそう言った

「あれ？キミ…、確か…」

ここで機を逃さず、”彼女”の顔を見つめながら、声をかけてみた

「あっ、あなたは…」

よし、この子は俺を覚えていたようだ


...



「ええと、横田さんだったかな？いつぞやは病院で…」

「ええ…、あのう…、今は仕事中なんで、すいません」

そう言うと、横田競子はそそくさと厨房へ入って行った

「大場、トイレ、行ってこいよ」

「え？俺、いいや、今は」

「いや、行ってこい。勘定は済ませとくから…」

フフ…、コイツ、すぐに俺の言ってること、理解してくれたようだ

ニヤッと笑って、ゆっくりとした足取りでトイレに向かっていったわ


...



さあ、もうひとタイミング掴まなきゃな…

今だ！

「お勘定、お願いします…」

「あっ、ハイ…」

うまく横田にレジを打たせることが出来たぞ

「１４５０円です…」

おれは１万円札を出した

「ここでのバイトは長いの？」

「いえ。最近です、始めたのは。…はい、おつり、８５５０円です」

「ああ、ごちそうさま」

「ありがとうございました…」

俺がおつりを受け取ると、彼女はすぐにレジを離れる動作だった

「また来ますよ。頑張ってね、彼氏とも…」

横田競子の後ろ姿にその言葉が届いた瞬間、ちょっと足を止めた気がしたが、彼女、そのまま振り返ることはなかったよ


...



それにしても…、あの子、どう見ても普通の女子高生じゃねえかよ

去年会った時に比べりゃ、ややあどけなさが削がれた感じは受けたが…

それにしたってだ…

あの凶暴な麻衣と”対等”を張ってた子とは、とても思えないって

去年の夏には、麻衣と壮絶なケンカをやってのけたって、聞いていたが…

それどころか、なんと今夏にはクスリで捕まったってこった

今の横田競子については、もう少し知る必要があるな…