ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ざわめき/その16
剣崎



やっぱりお偉方とのゴルフは疲れる…

腕が違う人たちと合わせるのも、テクニックがいるもんだってのを痛感するよ(苦笑)

今日は明石田の叔父貴が矢島さんを伊豆に呼び、関西の業界OB、それに俺の4人でハーフを回って、3人はサウナに入っている

俺は所用にかこつけて、先に宿泊先のホテルに向ってる途中だ

まあ、なんとか3人ともご機嫌は上々だったし、ホッとしたわ

それにしても、矢島さんと叔父貴の会話はなかなか興味深かったよ


...



「しかし傑作だな、その仕置きの次第は…。是非、その場を見たかったってもんだ。わっはっはっ…」

「叔父貴、俺はそんな呑気になれんですよ。おい、剣崎、ホント大丈夫なんだろうな!倉橋も未成年の嫁を手に入れて、シラフじゃねえのと違うか?」

「抜かりはありません。今までの経験則は踏まえての上で、やらせてることですから…」

「ハハハ…、矢島、倉橋にあの娘をくっつけたのは大正解だぞ。麻衣と直に会って確信したよ。倉橋は、ここんとこで進化を遂げたわ。でよう、剣崎、そのチンピラをまだいじるんだろ?」

「はい。倉橋と麻衣はもう、次の矢を放っているようです。矢の届く先はそれなりの場所です。いずれ、お二人の関心事になり得ると思います」

「おお、楽しみにしてる。矢島、こっちもガンガン動いて、適宜、”局面”に活用すりゃいいんだ。面白いじゃねえか、ハハハ…」

「まあ、剣崎の手綱裁きは分かってはいますが、正直、ヒヤヒヤもんですよ。まるで、会長がガンガン突っ走っていた時代の自分の心境ですよ」

「うん、そうだな。俺もアニキにいつも振り回されて、あやすのに、ふうふう言ってた頃と重なる。やっぱり、麻衣の中のモン、兄貴と一緒だぞ」

この時の叔父貴は大まじめの表情だったので、俺も矢島さんも笑いを押さえるのが容易じゃなった


...



「そんで、どうなんだ?建田んとこにいたの、”仮小屋”も必要だろうが」

「その件なんですが…、叔父貴、会長とも話したんです。どうでしょう…、その間宮って旧建田組のチンピラ、これから見える御大に”置き場所”をお尋ねしたら…」

こういう話を向けると、この人は瞬時に眼光が鋭くなる

「よし、この後、芝たたきの間を見て、押し付けよう。で、今どこにおいてんだ、間宮は」

俺は矢島さんに目で振った

「星の字の足元です…」

矢島さんがさらっと短く答えた

「おい、奴ら、間宮の”口”となりゃ、よだれもんだろうが。ちょっと無防備過ぎねえか?」

今度は俺が答えた

「ご安心ください。まるで要人並みに人で囲ってますから。ここは好きなだけ、よだれを流させます」

叔父貴は大笑いしてたよ


...



ホテルの駐車場に愛車の青いポルシェが止まったのは、3時前だった

ちょうど、チェックインでフロントは賑わっていた

秋の観光シーズンってこともあるのか、それらしき宿泊客が目立つな…

そんなことを頭に浮かべ、フロントを横目にエレベ-ターヘ向かう俺の視界に見覚えのある顔が割り込んできた

あいつ…

観光客とはちょっと風体が合わない、4,5人の若い男たち

何人かは肩にギターらしきものを下げている

その中の一人…

俺は一旦足を止め、フロント方向に戻って行った







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