ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ざわめき/その17
剣崎
「アキラ…」
「…、剣崎さん?」
「しばらくロビーにいる。頃合い見て、良かったら降りてこいよ」
俺はあらかじめサングラスを外していた
そして、ガラにもなく、普通にスマイルってやつで精いっぱい、アキラにシグナルを発したよ(苦笑)
最後尾のアキラの前で、フロントとやり取りしている他の連れには気取られないように小声をかけて
...
アキラを待つ間、先日の倉橋と麻衣からの、それぞれの”報告”に思いを巡らせていた
今回の裁きの場を、麻衣は最初から最後まで立会った
倉橋が言うには、血しぶきが上がる場面でもたじろぎもせず、終始、冷静に決して目をそらすことはなったという
自分が作業中も、他の者へは事前に麻衣の様子を事細かくチェックするように指示していたらしいからな
しかも、異例の抜擢だった進行役の手腕も半端なかったと…
これには、矢島さんも明石田さんも、唸っていたわ(苦笑)
...
麻衣は相和会を巡る諸情勢を、鋭いカンで見切っている
そして、ヤツの言うオペレーションとやらを画策し、すでに着手しているだろう
自分が倉橋の妻になるという立場も念頭に入れながら、すべてを見通し計算したうえで…
「麻衣は俺の考えが及ばない発想で、次から次へと組み立ててくるんで、俺、ついて行けねえっすよ」
倉橋がぼやきだか、のろけだかわからねえが、嬉しくてしょうがない口ぶりだったのは、受話器を通してもはっきりわかった
いやいや、他人ごとではないな
俺も麻衣について行けなくならんように、心しないと(笑)
...
「剣崎さん…、お久しぶりです。ここ、いいですか?」
ロビーで待つこと、40分程度してアキラがやってきた
「ああ…。そっちも連れがいるようだし、手短かでいこうや」
「はい。それで頼みます」
さっきの”なり”で、コイツがバンドに戻れたのは測れる
ひょっとして、プロの途が開けたのか…
もしそれなら、嬉しい限りだ
なにしろ、アキラのプロデビューの夢を打ち砕いたのは、俺と麻衣だ
しかも、残酷このかたない手段で…
...
「まず言っておこう。お前とケイコの”張り”はあれ以来、一切ない。命に誓ってな。約束は守っている。帰ったら、ケイコにもそう言ってくれ」
おれはいきなり、ずばりと告げた
無論、アキラの目に、針のような鋭い視線を浴びせるという自覚を持ちながら
俺の言葉が即、自分自身への問いかけだということは、アキラは即理解したようだ
「もう、あなた方のことは、オレ達二人とも頭から外れてましたが、”それ”聞いて安心しました。ケイコにはそっくり伝えます」
「ああ、そうしてくれ」
「俺たち、必死にやってます。ただ、細かいことは言いたくないんです。だから、何も聞かないでください」
「わかってる。お前のギターを肩にした後ろ姿、かっこよかった」
「剣崎さん…」
「じゃあな。呼び止めてすまなかった。ケイコによろしくな」
俺はまたガラにもない普通の笑顔を作り、その場を先に去った
ふん、見違えたな…、アキラ
剣崎
「アキラ…」
「…、剣崎さん?」
「しばらくロビーにいる。頃合い見て、良かったら降りてこいよ」
俺はあらかじめサングラスを外していた
そして、ガラにもなく、普通にスマイルってやつで精いっぱい、アキラにシグナルを発したよ(苦笑)
最後尾のアキラの前で、フロントとやり取りしている他の連れには気取られないように小声をかけて
...
アキラを待つ間、先日の倉橋と麻衣からの、それぞれの”報告”に思いを巡らせていた
今回の裁きの場を、麻衣は最初から最後まで立会った
倉橋が言うには、血しぶきが上がる場面でもたじろぎもせず、終始、冷静に決して目をそらすことはなったという
自分が作業中も、他の者へは事前に麻衣の様子を事細かくチェックするように指示していたらしいからな
しかも、異例の抜擢だった進行役の手腕も半端なかったと…
これには、矢島さんも明石田さんも、唸っていたわ(苦笑)
...
麻衣は相和会を巡る諸情勢を、鋭いカンで見切っている
そして、ヤツの言うオペレーションとやらを画策し、すでに着手しているだろう
自分が倉橋の妻になるという立場も念頭に入れながら、すべてを見通し計算したうえで…
「麻衣は俺の考えが及ばない発想で、次から次へと組み立ててくるんで、俺、ついて行けねえっすよ」
倉橋がぼやきだか、のろけだかわからねえが、嬉しくてしょうがない口ぶりだったのは、受話器を通してもはっきりわかった
いやいや、他人ごとではないな
俺も麻衣について行けなくならんように、心しないと(笑)
...
「剣崎さん…、お久しぶりです。ここ、いいですか?」
ロビーで待つこと、40分程度してアキラがやってきた
「ああ…。そっちも連れがいるようだし、手短かでいこうや」
「はい。それで頼みます」
さっきの”なり”で、コイツがバンドに戻れたのは測れる
ひょっとして、プロの途が開けたのか…
もしそれなら、嬉しい限りだ
なにしろ、アキラのプロデビューの夢を打ち砕いたのは、俺と麻衣だ
しかも、残酷このかたない手段で…
...
「まず言っておこう。お前とケイコの”張り”はあれ以来、一切ない。命に誓ってな。約束は守っている。帰ったら、ケイコにもそう言ってくれ」
おれはいきなり、ずばりと告げた
無論、アキラの目に、針のような鋭い視線を浴びせるという自覚を持ちながら
俺の言葉が即、自分自身への問いかけだということは、アキラは即理解したようだ
「もう、あなた方のことは、オレ達二人とも頭から外れてましたが、”それ”聞いて安心しました。ケイコにはそっくり伝えます」
「ああ、そうしてくれ」
「俺たち、必死にやってます。ただ、細かいことは言いたくないんです。だから、何も聞かないでください」
「わかってる。お前のギターを肩にした後ろ姿、かっこよかった」
「剣崎さん…」
「じゃあな。呼び止めてすまなかった。ケイコによろしくな」
俺はまたガラにもない普通の笑顔を作り、その場を先に去った
ふん、見違えたな…、アキラ