ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ざわめき/その18
砂垣



夜の西新宿なんて、ホント久しぶりだな

エリカとの時間は9時過ぎってことにしてあるから、まだ時間がある

昨日、メモにあった電話番号に連絡したら、エリカ本人と話ができた

余分なことは話さず、アツシが行けないので、預かり物を届けるのを頼まれてるから、明日店でと…

電話の声からすると、20台後半までいってないかな

今どきの軽いぶりっ子調のしゃべり方で、アツシが行けないと言っても、さらっとしてた

お目当てのマニュキアさえいただければ、それでOKってとこだろうか

もうすぐ会うことになるが、果たしてどこまで話すべきか

場合によっては、向こうからも”特段”の話が飛び出すかもしれないが…


...



うーん、さすがにこのあたりは活気が違うな

同じ東京でも埼玉寄りとは

当たり前だわな(爆笑)


...



あそこの人だかり…

一際、目立つ派手な格好と佇まい…

俺でもすぐわかるわ

ロックのライブ聴きに来て、並んでる連中だ

あそこ、たしか新宿ロフトがあったよな

まあ、最近はバンドブームってことで凄いらしいな

ここから見回しても、あそこの若もんからは、なんだかんだ言ってもエネルギーがビンビン伝わってくるよ

だけど、俺なんかに言わせりゃ、所詮雑音だよ

わかんねえや、あんなの聴く感覚って

はは…、なにしろ俺のカーステは、アイドル系の歌謡曲専門だし、カラオケで歌うのは演歌だからな…(笑)

えーと、もうすぐ9時だし、そろそろ行ってみるか


...



そこから歩いて約10分、路地裏の7階建てビルにクラブJはあった

狭いエレベーターを4階で降り、一歩進むと、もうそこが店の入口だ

さすが、都心の密集地にひしめき立つ雑居ビルだわ

閉所恐怖症の方、ご注意ってとこだよな(苦笑)


...



「こんばんわー」

ドアを開けると、扉上部のドアチェックにぶら下がった鈴の音が鳴ってる

店内は縦長で、10坪くらいだろうか

結構明るい雰囲気で、お客も一組いた

はは、ちょっと安心したかな

「いらっしゃいませ…」

30代と思われるきれいな女性が、すぐに出てきたわ

「あのう、エリカさんと9時ごろにって言ってあるんですが…」

「ああ…、じゃあ、あちらの奥へどうぞ…」

俺はカウンターの陰になってる、奥のコーナー席に案内された


...



「今、エリカちゃん来ますからね」

さて…、一体エリカちゃんとはどういった展開になるのか…

俺は、アツシから預かった”品”をソファの脇に置いて、”彼女”を待った






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