ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ざわめき/その19
砂垣



コツ、コツ、コツ…

そのヒールの靴音は、やや速足な感じだった

いよいよご対面となるぞ

「いらっしゃいませー!エリカで~す!」

エリカちゃんは俺の右横に座った

濃いピンクのスーツ姿で、割と小柄のようだ

どうも俺は女となると、顔を見るより先に、体へ目が行ってしまうタチでね、ヘへ…

胴体と足は目を通したんで、では…、お顔を拝見だ

「???」

ぎゃー!

コイツ…、本郷麻衣じゃんか…!

「砂ちゃん、こんばんわ」

「麻衣…、お前がなんで…」

「いやだなあ…、私、エリカよ。ちなみに上の名前は”きょうだけ”よ」

ふざけんなって!

今日だけエリカの麻衣ってかよ…


...



「砂ちゃん、これ、アツシさんのキープボトル。水割りでいい?」

「…」

「心配しないでいいわよ。毒なんか入れないわ、こういうとこではね」

俺はもう固まってたよ…

アタマん中はパニクっちゃってるし、額からも汗がジワーって噴き出てきたわ

「はい、どうぞ…」

体を密着させて、グラスを俺に差し出す麻衣の顔はかわいいが、俺には悪魔がかぶってる仮面にしか見えねえよ…


...



「私に渡すもの、あるんでしょ?早速いただくわ」

俺は左の尻の脇に置いてあった、”品”をコイツに差し出した

受け取るや否や、麻衣はすぐにリボンを外し、包装紙を乱暴に破って中を開けた

「これ、高いんでしょ?私みたいな色気のないガキにはまだ無縁ね。ああ、ちゃんと渡しとくから安心して」

この野郎、周到に言い回しを計算してやがる

本物のエリカはどこにいるんだよ…

だが、俺にはここで聞けねえって

麻衣の口から出る言葉、想像すると怖いって


...



「ああ、そうそう…。私もお返しのプレゼント渡すんだったわ。はい、コレ…」

なんだよ、コレ…

目の前に置かれた”品”は、マニュキアのより一回り小さく、白い無地の包装紙に、黒いリボンが施されていた

「早く開けてみて。アツシにはさ、あなたにオープンしてもらうこと、了解してあるから」

何言ってんだよ、このイカレ女め!

アツシから事前了解って…

「なにやってんのよ!さっさと開けなさっいって」

来たよ…

このメリハリの利きも、更にグレード上がってるわ

他のホステスや客もこっちを見てるが、麻衣は涼しい顔してやがる…

「ああ、開けりゃあいいんだろう。今やるさ…」

俺はもうヤケクソだった

どうせこの中身、ロクなもんじゃねえよ…




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