ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
ざわめき/その20
砂垣



「わー!なんだ、こりゃー!」

俺は思わず、こう大声を発してソファから飛び上がったよ

「ぎゃははは…、みんなー、この人面白いでしょ?これ、十八番なのよ、彼の。いきなり仰天するギャグ…」

客と店の女、3人が全員、麻衣のフリに大笑いしてるよ…

勘弁しろって…

笑い事じゃねーだろうよ

目の前の”ブツ”はどうしたんだっての!


...



”それ”は爪だった

赤いマニュキアの塗ってある、小さく、爪の先は上品にとんがってて…

どう見たって人間の、しかも若い女性の生爪だろうが…

「もういい?じゃあ、しまうわよ。それさ、持って帰ってね」

麻衣は”それ”の収まっている小さい箱にふたを閉め、包装紙で包みなおしている

「お持ち帰りなんてゴメンだぞ、そんなの。いらねえっての!それより、”それ”、どういうことだよ!」

俺の体にぴったりくっついている、その恐ろしい女に思わず問いただしたよ

「あなたがいらないんなら、このマニュキアと一緒に届けるわ」

無視しやがった、コイツ

「誰にだよ?」

「決まってるでしょ、この爪の主よ。ついでにその高級品、爪に塗るとこも見てこようかしら。もっとも、一本足りないから、悲しませることになるかもね、全部塗れないわって…。いや、その分は足に塗りゃあいいんだわ。ねえ?」

「…」

コイツのイカレ度、ギネスブックに載れるって…


...



「あのよう、結局、俺に何がしたいんだよ?」

「凄い汗ね。拭いてあげるわ」

麻衣はおしぼりで俺の額の汗をぬぐってる

こんな何気ない動作でも、こう近くでコイツにされてるかと思うと、恐怖心で心臓がバクバクしてくるよ

「あなたとはね、今日、全部決めごとをつけてたいのよ。その前にさ、アツシからあなたが聞いてること、結構事実と違うことあるんで、私が訂正してあげるわ」

「アツシが俺に伝えたこと、お前が知ってるってことかよ!」

「知ってるも何よ、”原稿”はこっちが渡したんだもん。まず、明石田のおじさんが制止したって話、あれは全くウソ」

マジかよ…!


...



「あんな下っ端に、叔父貴さんがわざわざ関わる訳ないわよ。あの時は私のダーリンが責任者で、すべての判断を下してたわ」

なんてことだ…

俺の汗は、額どころか、すでに全身を潤していた






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