ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
凄絶!麻衣ロード/その19
麻衣



「それとだ…、砂垣が”毒の実”かじったぞ。さっそくね。星流会がすんなり口添えしてくれてようでね。まあ、時期が来れば、麻衣の望んだ場面が訪れるだろうよ」

ふー、この人の手並みには、もう呆れるばかりだわ

私は丁重に感謝とお礼を述べ、約40分のテレホンミーティングを打ち切った


...



これで、私の描いた絵図はほぼレールに乗っかった

あとは基本、流れに沿うことになる

あーあ、なんか気が抜けちゃったな

またいつもと一緒だよ…

普通の感覚の人間は、コトをやり遂げれば充実感に浸れる

ところが、私は違うんだ

やり遂げたあとは、いいようなくさびしくなる

その一瞬で、今まで熱く事に当たってた自分が終わっちゃう

私は生きてる限り、今現在が過去になることに恐れおののき続ける…


...



2階の自分の部屋へ戻ると、ポケットの中から先日買ったモノを出し、机に並べてみた

並んだのは3つだ

3点セットよね、これ

ふふ…、そうそう

”これ”使う場面、まだ残ってるって事じゃないのよ

もし、それに出くわせば…

それは今まで経験したこととは、まるで次元の違う”現在”と”過去”の移行になるのは間違いない


...



その晩、ある夢を見た

夜中の3時過ぎ、大声をだして、布団から跳ね起きた

体中、寝汗でびっしょりだ…

「夢か…」

なんだか、テレビドラマや映画でよくあるシーンと同じだわ

「麻衣、どうした?」

あまりに大きい声を出したようで、隣の部屋で寝ていたお母さんが起きちゃった

「だいじょうぶだよ。変な夢見ただけだから…」

「そう…。なら、おやすみ。麻衣…」


...



その夢の中で、私は人を殺した

その相手は中学時代、とても嫌いだった若い女の教師

そいつを授業中、果物ナイフでブスリと一刺しだった

ところがどうだ…

教室内のみんなは、血にまみれた私に気付いてくれない

私は大声で叫んでるのに

「みんなー!気づいてよー!」


...



翌朝、中学時代の写真が貼ってあるアルバムをめくってみた

いた!

この女だ

生理的に嫌いで嫌いでどうしようもなかったんだ、この英語教師の女

私には、どうしても許せない人間が何人かいる

この女教師、かかりつけの歯医者のおやじ、駅の売店のおばはん、夏休み最後の日、レストランでフォークぶっ刺したイノシシ男、そして久美を汚したアツシ…

それは、おけいにカッカと熱くなったり、相川夏美を女として嫌悪していたのとは、全く別の感情なんだ

別物なんだよ、奴らに抱く感情は

なぜか、昨夜からそんなことを、とても意識してる

どうしちゃったんだろう、私…



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