ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その4
アキラ



部屋に戻り、追川さんから電話があったことを聞いた

「とにかく、こっちから連絡してみよう。自宅の電話だからさ、仕事場じゃないし」

「うん…。でも、こっちのことは何も言わないで。余分なことはなにも。ねっ…」

「わかった…」


...



夜8時前、電話には追川さん自身が出た

「ああ、お疲れのところ悪かったね、そちらから電話してもらって…。彼女と一緒に住んでるみたいだけど…」

「あのう、今はこっちのことは話したくないんです。すいませんが。用件はお聞きしますので、おっしゃってください」

「…うん。なら、こっちからの報告としよう。例の週刊誌に出た記事もきっかけになったと思うんだが、本郷麻衣には相和会以外の組織も接触しているようだ。無論、君たちを調べたりとかは自重してる。あくまで、向こう側からの切り口で得た情報をもとにね…」

「そうですか…。僕ら二人のことは、もう直接調べてないんですね…」

オレは受話器にそう語りかけながら、振り返ってケイコちゃんに目で合図を送った

彼女も小さくうなずき、目で会釈してる


...



「…要は相和会と全国組織双方が、今後の、言ってみれば互いの付合い方を見直そうという時期にあるということでね。まあ、あの相馬が他界したんだから、必然ではあるんだが…」

「それで、その影響があるってことですか、僕らに…」

「…あの世界に生きてる連中は、こういう際には、条件面の折り合いで互いに優位に立とうと必死になるものなんだ。今回、そのかなりの部分に、本郷麻衣が食い込んじゃってるとは見てる…」

「そうなると、麻衣の身が危険だと言うことですか?じゃあ、僕たちはどうなんです?」

畳に正座状態のケイコちゃんは少し身を起こして、心配そうにオレを見てるよ…


...



「まあ、まあ…、そう早まらないで、香月さん。冷静に考えればわかるが、奴らは一般人、ましてや未成年者なんかに危害を加えるなんてことは絶対に避ける。それこそ、利害関係でどうしようもない、選択肢がそこしかない、そういう場合だけが例外ということです」

「はっきり言ってください。僕たち二人は安全なんですね?このまま安心して二人でやっていけるんでしょうね?追川さんが今言った”例外”って、今回は当てはまらないと思っていいのか、それ教えてください!」

オレは気がはやって、一気に捲し立てた

ケイコちゃんは下唇をかんで、俺の反応に気が気じゃない様子だし…

さんざんな犠牲を払って、やっとスタートを切ったとこだよ

二人とも何とかバイトの口を得て、ささやかながら新しい生活を始めたんだ…

もうごめんだって!

”連中”とのかかわりは一切お断りだよ!





< 94 / 224 >

この作品をシェア

pagetop