ヒートフルーツ【特別編集版第2部】/リアル80’S青春群像ストーリー♪
この愛を一歩、一歩/その5
追川



守るべき愛する人を得た時、人間は変われる…

この声の主、今の香月アキラには、まさにその言葉がぴたりと符合するよ

彼は彼女の為に、まさに死に物狂いだ

どちらかというと淡白なイメージだったが、がらりと変容を遂げた感じだよ

「香月さん、そちらが心配している事態の可能性がゼロなら、先に結論だけお伝えしてますよ。全く心配いらないよと、最初にね。そこで、懸念は確かに少ない可能性ながら、あると思う。その上で、僕が考えてるコトを具体的に言いましょう。いいですか?」

「はい。お願いします…」

彼は少し落ち着いた口調になった…


...



「この前も言ったように、本郷麻衣を僕はよく把握していない。だから、相和会もそうだが、死んだ相馬豹一と長年対峙してきた
敵対勢力ともいえる連中に、あの子がどんな対応をとっているのか…。その推測が的外れということもあり得る…」

「…」

できれば香月アキラと横田競子から、麻衣についての情報が欲しい…

オレは、電話口の向こうからの彼の言葉に淡い期待を持って、しばし間をおいていた

だが、”向こう側”からは、柱時計の振り子の音が響いてくるばかりだった…


...



15秒ほどの沈黙をおき、オレは再び口を開いた

「…僕が捉えている本郷麻衣は、まさに生前の相馬豹一の感覚で生きている。それが前提ですよ。ならば、極めて通常の常識では考えられない対応をとると想定してしまう。…、せめて、君たちもそう思っているのかどうか…。それだけでも、是非聞かせてもらいたんだが…」

「…。ちょっと待っててもらえますか」

「うん、わかった…」

どうやら、彼女と一度話をしてみるようだ

オレは何としても、3人を奴らから完全に切り離してやりたい

真実が果たしてどんなことであっても、それが最優先なんだ

この3人の今の境遇…

ここに至って、オレにはどうしようもないほど、心の奥深いところにまで入り込んでいたのだ




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