筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
理一郎さんとお付き合いを始めたんだから、筒井くんとの関係は清算しなくてはいけない。
通勤中もずっとそのことを考えていた。
彼のことだから案外お金であっさり終わるのかもしれない。
「終わり……」
思わずポツリとつぶやいてしまった。
筒井くんとの関係が終わっても、本当に他の男性(ひと)が私を眠らせてくれるのかな。

***

「東条さん、今日のアポの確認なんだけど」
理一郎さんとは会社では今まで通り、常務と秘書として普通にビジネスライクに接している。そういうところも大人としてちゃんとしている。
「本日は13時に布川様、15時に団インターナショナルの栗田様との新商品の商談予定が入っています」
「了解。東条さん」
「はい?」
「首の後ろのところ、なんか赤くなってるけど大丈夫?」

理一郎さんに指摘された瞬間、バッと手で首の後ろを隠すように覆った。多分、一瞬で赤面していたと思う。

「む、虫刺されだと思います」
急いでパウダールームに駆け込んで確認した。
「やられた……」
今朝の妙にご機嫌な笑顔の意味がわかった。
それにしてもいつ? 眠ってる間につけられたってこと?
こんなことで自分が熟睡できていたことを知るなんて、皮肉。
虫刺されじゃないことを理一郎さんに気づかれていないだろうかと、まとめた髪を解きながら不安になる。

結局デスクに戻ってからも理一郎さんの態度が普通だったからホッと胸を撫で下ろした。
やっぱりこんなふしだらな関係をいつまでも続けていたらいけない。

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