筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
「来週」
「ん?」
「来週の土曜に、彼とデートの約束したの」
「ふーん」
筒井くんはイラついたりもしていない、平然とした声。
「いつも家まで送ってくれるから、その日は上がってもらおうかな」
「なんで俺にそんな話するの?」
どうして筒井くんの胸の中でこんな話をしているのか、自分でもよくわからない。平然としてるのが悔しいのかな。
「筒井くんがいなくても大丈夫って言いたいのかも」
また意地悪な言い方をしてしまう。
「小夜ちゃんて本当に……」
溜息の後には〝残酷〟って続くのよね。自分でもそう思う。

その夜は筒井くんに抱きしめられていてもよく眠れなかった。

翌日、仕事から帰ると筒井くんの置いていった合鍵が私を迎えた。

***

筒井くんがいなくなってから五日目。
斑目さんからメールが届いた。いつもは月の初めに届くのに、今はまだ月の半ば。
それに、いつもは何かイベントの時に届く音楽のギフトが付いていて少し不思議だったけど、眠れないタイミングには嬉しいサプライズ。
今回の曲はいつもよりも少しアップテンポでどこか筒井くんを思い出させる。

だけど結局、筒井くんのいない夜は私を深くは眠らせてくれなかった。

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