筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
遊園地は子どもの頃に何度か来たけど、ジェットコースターには初めて乗った。
「怖そうって思ってたけど、楽しいね! もう一回乗りたいかも」
はしゃぐ私の横で筒井くんはげんなりしている。
「一回でいいでしょ……」
「もしかして、怖かった?」
「そんなんじゃねーし」
強がる彼がかわいくて「ふふっ」と笑みがこぼれる。
「次はメリーゴーランドに乗りたい」
私が指を差すと、筒井くんがものすごく嫌そうな顔をした。
「さすがに恥ずい」
「え〜ひさびさに乗りたかったな」
つい、しゅんとしてしまった。
「そんなに好きなの? メリーゴーランド」
「昔、好きだったの。子どもの頃は自分のことをお姫様だって勘違いしてたから、お姫様の乗り物だ〜ってよく乗ってた」
懐かしいけど少し照れ臭い。

「案外似合うね、白馬。王子様っぽい」
なんだかんだで付き合ってくれた筒井くんが想像よりもお上品な王子様っぽくて、思わず感想を漏らしてしまう。
「案外は余計」
「だって普段は全然王子様っぽくないのに」
「今どき王子も姫も白馬なんか乗ってないと思うけど」
「夢がないなぁ」
「夢なんてなくていい。メリーゴーランドなんかに乗ってなくても俺にとって小夜ちゃんはお姫様だし」
〝小夜ちゃんはお姫様〟なんて恥ずかしいセリフよく言えるなって、思わず赤面してしまった。
「お姫様は私みたいに親に逆らったりしないよ」

「今どきのお姫様は自由でいいんだよ」

きっとそういうことが言いたくて、メリーゴーランドに付き合ってくれたんだ。こんな私でもお姫様だって思っていいって。

「筒井くんみたいな王子様だったらお姫様も幸せだね」

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