筒井くんと眠る夜 〜年下ワンコ系男子は御曹司への嫉妬を隠さない〜
次にタクシーが止まったのは、ラグジュアリーホテルのエントランス。
筒井くんは先にタクシーを降りると、私の手を取って車から降ろした。
本当の本当に筒井くんなの?
彼にエスコートされて高層階にある夜景の見えるレストランにたどり着く。
「当日で席あるの?」
「うん、大丈夫だから入ろ」
席があるどころか一番奥の夜景が見える個室、つまり一番良い席に案内された。ますます状況がよくわからない。
「小夜ちゃん何食べたい?」
筒井くんはラーメン屋さんに行った時と変わらないくらい平然としていて、メニューを捲る仕草も手慣れている。
お金は大丈夫なのかな、なんて野暮な心配が頭に浮かぶ。だって最近全然してなかったから、お小遣いあげてない。
……まあ、足りなかったら私が出せばいいか。
彼は料理もワインも私の好みに合わせて選んでくれた。
「……筒井くん、こういうお店慣れてるんだね。ワインにも詳しくてびっくりしちゃった」
「まあね」
いたずらっぽく笑うだけで、慣れている理由は教えてくれない。
私以外の、お小遣いをくれる相手と来たのかな。なんて考えて胸が少しだけモヤッとする。
料理が運ばれてきて、またびっくりする。
筒井くんはフォークとナイフの順番なんかに迷わないし、それらを扱う所作が美しくて、どんな料理も食べた後のお皿の上がとてもきれい。
「全然知らない人みたい」
思わずこぼしてしまった。
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