この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編

あまり周りでごちゃごちゃと、気を揉まれるのも疲れるだろうと思い、
 
「もう少し、横になってろ。」
と伝え、俺はキッチンに向かう。

スマホを使い、妊婦に優しい食べ物を検索してタップする。
吐いた後だし、胃に優しいものが良いだろと思い冷蔵庫を漁る。

冷凍室に白米がいくつか、綺麗にストックされているのを見つける。

これは卵粥が良さそうだと思い付き、スマホを片手に慣れない料理をする。

格闘する事15分、そこそこ満足する味の物が出来上がる。

火を止め鍋に蓋をして、寝室を覗きに行く。

眠れなかったらしい心菜は、横になりながら何かを見ている。

「卵粥、作ってみたけど食べられるか?」
と伝える。
ベッドで身体を起こそうとするから、すかさず背中を支えて助ける。

「わざわざありがとう。
蓮さん、これ赤ちゃんのエコー写真です。」
心菜が笑顔で俺に差し出して来る。

俺は、緊張して少し汗ばむ手をズボンで拭い、恐る恐るその写真を受け取る。
3枚あるそれを心菜が丁寧に教えてくれる。

1か月ずつに撮ったエコー写真は、初めは魚のような形で、それでも徐々に大きくなって、目が分かるようになり、足や手が分かるようになっていく。

「凄いな…。」
俺は驚き何度も何度も見返した。

「昨日…早く帰らないとって言ったんだけど…。」

心菜は言い難くそうで、しばらく間が開く。俺は心菜が話し易いようベッドに腰を下ろし、次の言葉を気長に待つ事にする。

「…実は今、病院の計らいで悪阻が治ったらまた病院で働ける様に、してくれているみたいなの。…だから、出来れば産休に入るまで、病院で働きたいと思ってるの。」

心配そうな顔を向け、俺の顔色を伺っているようだが…。

俺はと言うと、感動を覚えていた。

心菜が妊娠中も看護師としての歩みも止めないで、頑張りたいと考えていた事が、凄いと、さすがだなと感心した。

卵粥を少しずつ食べさせながら、俺は思案する。

心菜のその計画に、俺もどうにかして入れて貰えないだろうかと…。
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