この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
「アイツが嫌がるだろう。
…私が勝手に来た事だって、後で抗議されそうだからな。」
苦笑いする義父に、心菜は決心したかのように真剣な顔で言う。

「蓮さんは、本当はお父様やお母様と仲直りしたいんだと思います。
凄く優しくて、思いやりのある人ですから。ただ、気持ちを伝えるのが不器用なだけなんです…。」

心菜は真っ直ぐな気持ちでそう伝える。

蓮はただ、今更どう接したら良いのか分からないだけなのだと、心菜はずっと思っていた。

生まれて来る我が子にとっても、祖父母と呼べる人は蓮の両親しかいないのだ。
もちろん心菜にとっても…。

出来るのならば、仲直りして欲しい。
純粋な気持ちでそう切望する。

「蓮には悪い事をしたと思っている…。
私の気持ちを子供の頃からずっと押し付けてきた。
会社を継がせる事は、彼にとって最善だと思っていたのだ。」

義父は初めて心の内を明かす。

心菜が持つ、純粋で真っ直ぐな所がそうさせるのか、不思議と心が洗われるような気分になっていた。

「きっと、お父様と蓮さんはボタンを掛け違えただけなんです。
お互いがお互いの事を思っているのに、本当の気持ちが伝わらないのはとても辛いです。

私は…両親を子供の頃に亡くしました。
伝えたい事も話したい事もまだまだ沢山あったのに…もう、話す事が出来ないんです…。

でも、お父様と蓮さんは違います。
これからいくらでも話し合って、分かり合う事が出来るんです。」
心菜は必死でそう伝える。

「分かった…。君の好意に甘えて来させて頂くよ。」
義父はそう言って頷いて帰って行った。
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