この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
(蓮side)
夜の生放送の収録を終え、これで日本での仕事を何とかこなし終えた。

寝る間も無いとはこう言うことかと思うほど、日本に来てから多忙な日々だった。

このまま空港に向かい最終便で心菜の待つLAに帰る。

LAには1カ月程滞在していただけなのに、既に日本よりもLAに帰ると言う感覚になるのが不思議だが、心菜が居る場所が俺の帰る場所なのだと、そう思うとしっくりくる。

マネージャーの森元の運転で空港に向かう。

個人事務所を立ち上げる際、なぜか森元は会社を辞めて、俺の元で働かせて欲しいと頭を下げて来た。

ずっと社長の犬だと思っていた男が、あっさり会社を辞め俺に着いて来たのは驚きだった。

まぁ、それでも今まで通りマネージャーが変わらないのは、仕事をする上で楽だ。

それに、俺が不在中こいつが勝手に上手く事務所を動かしてくれるから、俺としても有難い。マネージメントに関しては優秀な人材だ。

「来月、日本にお戻りの際はもう少し長く滞在して頂きたいです。さすがに全てこなすのは難しい。リモートワークで出来る事も限られてますからね。出来ればLAにも拠点を作って貰えれば、俺がそっちで仕事捌けるんですけどね。」

やりたい事、言いたい事をズバズバ言って来るから多少疲れるが…。

「LAで拠点を作って何をしたいんだ?」
移動中は暇だから聞いてやると、

「アメリカでも貴方なら通用すると思うんですよね。英語で曲作ってくれませんか?俺、売り込むんで。全米のヒットチャートに載るのも夢じゃありませんよ。」

こいつの野望は果てしなく、俺の意図した場所では無い所へ、勝手にレールを引こうとするから厄介なのだが…。

「アメリカなんかで有名になったら、おちおち街も歩けない。日本でやってるくらいが性に合ってる。」

だから俺はコイツの野望をズバッと切り捨てる。

今の俺にとって一番大切なのは心菜と子供の事で、全米チャートなんてこれっぽっちも狙ってはいない。

「何でですか?勿体無いですよ。それだけの才能があるのに…」

「俺は自分のやりたいようにしたいから独立したんだ。それが不服ならいつ辞めてくれても構わない。」

「…勿体無い…。」
森元はそう呟くがそれ以上は何も言わず、空港へと俺を運ぶ。
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