この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
「何を言われた?」
そんな私の手を蓮さんがぎゅっと握って来るから、
えっ?と思って思わず目を合わせる。
蓮さんの目は怖いくらい真剣で、少し怯んでしまうくらいだ。
「大丈夫、何も嫌な事は無かったよ。
日本での事、謝ってくれたの。それに、凄く赤ちゃんの事気を遣ってくれた。」
蓮さんに少しでも安心して欲しくて、ニコリと笑ってみる。だけど怪訝な顔を崩さず、それでも握っていた手を離してくれた。
「本当にそれだけ?
あの人なら嫌味の一つも言いかねない。誰だって支配しようとする人種だ。心の中では何を考えているか分からない。」
警戒心一杯にして、蓮さんは言う。
「何もなかったよ。それどころか、作り置き料理を机で冷ましてたんだけど、興味があったみたいで試食してくれたの。」
蓮さんを注意深く見ると、お父様の意図が読めなくて、困惑しているように見える。
「美味しいっていろいろ食べくれたよ?蓮さんが言ってたような怖そうな感じに見えなかったし。」
なかなか警戒心を解いてくれない蓮さんを横目に、少しドキドキしながら伝えてみる。
「それで…あの、もし良かったらって夕飯にご招待させてもらったの。」
「夕飯⁉︎あの人が来るって?」
信じられないと言う顔色だ。
「うん。蓮さんさえ良ければ来たいって言ってくれたよ。」
「駄目とは言えないが…。」
今度は心配そうな顔になる。
「大丈夫だよ。北條の一員って言ってくれたの凄く嬉しかった。私もっとお父様と仲良くなりたい。
だって、この子のたった1人のお爺様だよ?」
お腹をヨシヨシしてアピールする。
そんな私を心配そうにしばらく蓮さんが見つめてくる。それでも理解はしてくれたようで、
「…いつが良い?俺から連絡しておく。」
と言ってくれた。
ハンバーグをまた食べ始めれる姿を見ながら、そっと微笑み私も食べ始める。
「心菜が傷付けられないか心配だ。」
「蓮さんが居るから大丈夫だよ。」
と、笑って受け流す。
夕飯を食べ終え、寝支度をして2人ベッドで寄り添いまったりとした時間を過ごす。蓮さんは飛行機の中であまり寝れなかったらしく、直ぐにでも寝てしまいそうだ?
それでも、私を後ろから優しく抱き寄せて、お腹をヨシヨシと撫ぜている。
「チビも元気そうだな。ぽこぽこ蹴ってくる。」
嬉しそうに胎動を感じて、久しぶりの父と子のふれあいを楽しんでいるみたいでわたしも嬉しくなる。
そうしているうちに、蓮さんの手がゆっくりと止まって、規則正しい呼吸が聞こえきた。
「お疲れ様でした。おやすみ…。」
私も蓮さんの温もりに包まれて、安心感と幸福感を味わいながら、いつの間にか眠りに着いた。