この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
そう強く心で思っている最中に、蓮のスマホが着信を告げる。

見れば、父親からの着信で…蓮は嫌な顔を森元に向け、渋々スマホをタップする。

「はい…。何ですか?」
素っ気なく端的なのは、ここ数日の電話攻撃のせいでもある。

父は今や、威厳に満ちた社長のなりを潜め、産まれてくる孫が可愛くてならない、馬鹿親ならぬ、馬鹿祖父と化した。

『今日は検診日だったんじゃないか?エコー写真を楽しみに待っていたのに一向にメールが来ない。心菜さんにもメールをして見たんが既読が付かない。
何があったんじゃないかと心配になったんだ。』

時計を見ると10時過ぎ、もしかしたら既に寝ている可能性だってある。

「今日も一緒に産婦人科に行きました。特に問題無いと医者からも言われています。久々の外出に疲れて寝てるだけでは?」
余り気にも留めない感じにそう父に伝える。

『…それならそれで良いんだが…。』

そう言葉を濁す父に、些かの不安を覚える。
何かと時の為に、心菜のスマホにはGPSを本人も納得の上に付けている。

「ちょっと待って…GPS見てみるから。」
蓮は不安を取り除くように、スマホをタップし心菜のスマホの位置を探る。

……位置情報が動いている…。
その瞬間、蓮は一瞬で青ざめ言葉を失う。

「はっ…⁉︎」

『どうした?何かあったのか?』
ただならぬ気配を感じ取った父が蓮に問う。

マネージャーの森元も瞬時にただ事では無い反応を目にして、蓮が握るスマホに目を落とす。

「GPSが動いている…それも、結構早い速度だ…。」

それには驚きを隠せない父も声を上げる。

『どう言う事だ⁉︎この時間は家に居る時間だろう?』

心菜に…何があったんだ⁉︎

検診後、いつものようにランチを2人で堪能し、いつものように家の中まで送り届けた。

その時確かにラフな部屋着に着替えた心菜を見ているから、どこかに出かける予定は無いはずだ。
震え出す手をもう一つの手で無理やり押さえ、思考を巡らす。

こんな時、逆に冷静な森元が機転を効かせる。

「…この道のり…産婦人科方面ですよね⁉︎もしかして…病院かも。」

そう言って、サッと自分のスマホをタップし産婦人科に電話する。
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