この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
どんな時でも冷静な蓮も、心菜の事になると途端に人間らしく狼狽える。

3回のコールの後、対応メッセージが流れる。
時間外だ……
『緊急の場合は1をタップして下さい…』
無機質な案内メッセージが流れ、森元もさすがに苛立ちを隠せない。

逆に少し冷静を取り戻した蓮は父との通話を切り、心菜のスマホにかけてみる。

着信音の後に留守番電話に繋がる。
蓮はそこにあえて心菜の名を呼ぶ。

「心菜、どうした?何かあったのか⁉︎」
呼びかけに応じる気配は無い。

「とりあえず、産婦人科に向かってくれ。」
蓮は素早く指示を出す。

そのタイミングで森本のスマホが緊急連絡先に繋がる。

『こちら〇〇産婦人科緊急連絡先です。どうしましたか?』
温かみのある人の声が聞こえて来て、ホッとしながら森元が問う。

「そちらの病院に通院してます。北條心菜さんの知り合いの者です。何か彼女にありましたか?」

『申し訳ありませんが、こちら守秘義務がありまして…貴方様の身分と証明が無いとお答えする事が出来ません。』

さすが、セレブ御用達の産婦人科だけあり、ちょっとやそっとじゃ情報は漏らさない。

今はその強固なセキュリティも、蓮にとっては邪魔になってしまう。

森元からスマホを奪い取り、
「北條蓮です、心菜の夫です。
彼女と連絡付かない、何かありましたか?」

『旦那様ですか。パスコードを覚えてますか?』

…パスコード…ああ、いつかのタイミングで心菜と決めた暗証番号…。
確か…結婚記念日…5月5日子供の日。

「…505です。」

『ありがとうございます、確認取れました。今、心菜さんはご自宅で破水されまして、量的にも緊急を要する状態なので救急車を要請、現在こちらに向かっている所です。
旦那様も来れそうですか?』

「はい、今向かっています。」

『今から裏口通路の暗証番号をお伝えしますので、書き留めてください。暗証番号は……。』

蓮は必死に書き留め電話を終える。

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