この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
(蓮side)
「心菜…!!」
沢山の計器に囲まれたベッドに横たわる心菜を見つけ駆け寄る。

目を閉じていた彼女が眩しそうにそっと目を開けて…俺を捉える。
その途端、大きく澄んだ瞳から大粒の涙が溢れて、彼女の血の気の引いた蒼白い頬を濡らした。

「…蓮さん…ごめんなさい。赤ちゃんを…危険に晒してしまって…。」

嗚咽と共に俺に謝ってくる。
「謝らなくて良い。心菜のせいじゃない。少し出産が予定より早くなっただけだ。」
俺はそう言って、少しでも安心させたいと心菜の細く白い手を握る。

「俺が側に付いてるからもう大丈夫だ。」

何があったのか聞きたい所だが、今はそれどころじゃ無い。元気な赤ちゃんを産む為に余計な事を考えさせてはいけないと気を取り直し、彼女の気持ちが落ち着くまで寄り添い落ち着かせる。

「痛みは?他にどこかぶつけたりとか…。」
目線を動かし彼女の身体の隅々まで目を凝らす。点滴をしている側の手首に包帯が巻かれ、固定されているのを見つける。

「手首、痛めたのか?」

「咄嗟に手をついた時に捻っちゃって…そんなに痛く無いよ。」
心菜は少し気持ちが落ち着いた様でホッとする。

「…帝王切開になるけど、心菜とチビの安全の為だから同意書にサインする。」
彼女が元気無くこくんと頷く。

「アメリカじゃ、3人に1人が帝王切開で産んでるんだろ。何も落ち込む事は無い。」
気休めかもしれないがそう言って励ます。
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