この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
そんな騒動があってから2週間後、龍二がひょっこり現れて蓮に言う。
「そんな自分から晒さなくったって良いんじゃないか?
わざわざ矢面に立って痛手を負う必要は無いよ。蓮は今までだって、何かと耐え忍んで来ただろ?
心菜ちゃんや心君を巻き込む事は得策とは言えない。」
「他に案があるとでも?」
龍二が自分からやって来る時はいつだって、蓮を助ける策がある時で、そうやっていつも人知れず守られていた事に気付いていなかった蓮では無い。
「さすが感が良いな。」
龍二がニヤリと笑う。
「何が分かった?あの例の記者だろ?」
蓮だって気付かないフリをしていたに過ぎないのだ。
北條家の時期当主になるべくして育てられて来た男なのだから、それくらいの機転は効くし、それを根掘り葉掘り知りたいと思うほど小物では無い。
「分かってたか。俺がコソコソ動いていた事を。」
龍二としては隠れて動いていたつもりだったのだが、やはり気付かれていたかと苦笑いをする。
「誰かに恨みや妬みを持たれる事に見に覚えが無いか?」
龍二が蓮に問う。
「そんな事ザラにあるだろ。
北條の後継ぎとして産まれたからには大なり小なり天敵はいるし、嫌われる事に今更痛くも痒くも感じ無い。」
「惜しい。そっち方面じゃ無い。」
謎解きのヒントのように面白おかしく龍二が言うから、蓮も乗ったとばかりにその謎解きに付き合う姿勢を見せる。
「じゃあ、アレだな。世に出る時に少しばかりオーディションを渡り歩いたから、勝手に蹴落とされたと思ったヤツが俺に恨みを持ってるとか?
まさか…心菜の元患者とかじゃないよな?」
心菜は可愛い。それにいつだって誰にだって変わらず献身的に患者と向き合うから、どこかで変な輩が勝手に思いを寄せたとしてもおかしく無い。蓮の思考はおかしな方向までおよび始める。
「心ちゃんが可愛いのは認めるが、そんな事まで心配してるのか?」
ハハハっと龍二は可笑しそうに笑う。
「どこで誰に恨みを買ったっておかしく無い世の中だ。」
「お前はな。出る杭は打たれるだ。目立つ奴がやたら動くと要らない恨みを買うもんだ。」
「原因は俺か…。
で、誰だったんだあのバイクの男は?」
そこまで分かってて泳がせてたのか…と、龍二は蓮の大物ぶりに舌を巻く。
「泳がせて出方を見ていた。龍二が動いてくれてる事には気付いてたからな。俺が出る幕が無かっただけだ。」
「良い部下を持って良かったな。」
龍二は自分を蓮の部下だと蔑み言う。
「お前を部下だと思った事は一度も無い。俺とは切っても切れない兄弟みたいなもんだろ。」
なるほど、そのポジションを認められていたのかと龍二が嬉しそうに笑う。
「で、本題に入るけど。
奴は、村上正明32歳。名前聞いてもピンと来ない?」
「さぁ、分からないな。」
「蓮の気にも止まって無かったって事だな。
そいつは何年も音楽をやっていてメジャーになるのを夢みてだ男だ。オーディションで蓮と同じようにデビューをしたかったらしい。
かなり借金して衣装やら学校やらに金使って、そのオーディションに賭けたがまんまと落ちて、蓮に対しての逆恨みだけが残った。」
「勝手だな。
恨むなら俺を選んだ社長を恨め。」
事務所のニーズにただ蓮の歌が合っていただけで、才能だとか運だとかその辺の事が絡んだとしても、逆恨みも大概にしてくれと怒りを覚える。
「まぁ、お前自身は自分を殺しニーズに合わせる努力をしたんだろうが、周りから羨まれるほどの才能に溢れた奴に見える訳だから。
しかも、生まれ持ったカリスマ性とその容姿には誰が羨み嫉み憎む事は容易い事だよ。」
「それに週刊誌じゃ、人を人とも思わないオレ様で、傍若無人に振る舞って、沢山の女を泣かせてる風に書かれてるから敵も増える訳だよな。」
はぁーと蓮は深いため息を吐く。
北條蓮は作られた虚像に過ぎない。
本人さえもそう思ってこれまで蓮を演じて来た訳だから、北條蓮と言う人間が、知らぬところで独り歩きしている感覚を今まで感じていた。
それはまるで他人事のようで、その方が生きる上で楽だと思っていたから、今まで訂正する事もしてこなかったのは自分のせいだ。
これもツケが溜まったせいだな。と、蓮は思い頭を抱える。
だけど、これからはそうはいかない。
守りたい人、大切な家族がいる。もう独りでは無い。
俺のイメージが独り歩きして傷付くのはもう、俺だけでは無いんだ。
「そんな自分から晒さなくったって良いんじゃないか?
わざわざ矢面に立って痛手を負う必要は無いよ。蓮は今までだって、何かと耐え忍んで来ただろ?
心菜ちゃんや心君を巻き込む事は得策とは言えない。」
「他に案があるとでも?」
龍二が自分からやって来る時はいつだって、蓮を助ける策がある時で、そうやっていつも人知れず守られていた事に気付いていなかった蓮では無い。
「さすが感が良いな。」
龍二がニヤリと笑う。
「何が分かった?あの例の記者だろ?」
蓮だって気付かないフリをしていたに過ぎないのだ。
北條家の時期当主になるべくして育てられて来た男なのだから、それくらいの機転は効くし、それを根掘り葉掘り知りたいと思うほど小物では無い。
「分かってたか。俺がコソコソ動いていた事を。」
龍二としては隠れて動いていたつもりだったのだが、やはり気付かれていたかと苦笑いをする。
「誰かに恨みや妬みを持たれる事に見に覚えが無いか?」
龍二が蓮に問う。
「そんな事ザラにあるだろ。
北條の後継ぎとして産まれたからには大なり小なり天敵はいるし、嫌われる事に今更痛くも痒くも感じ無い。」
「惜しい。そっち方面じゃ無い。」
謎解きのヒントのように面白おかしく龍二が言うから、蓮も乗ったとばかりにその謎解きに付き合う姿勢を見せる。
「じゃあ、アレだな。世に出る時に少しばかりオーディションを渡り歩いたから、勝手に蹴落とされたと思ったヤツが俺に恨みを持ってるとか?
まさか…心菜の元患者とかじゃないよな?」
心菜は可愛い。それにいつだって誰にだって変わらず献身的に患者と向き合うから、どこかで変な輩が勝手に思いを寄せたとしてもおかしく無い。蓮の思考はおかしな方向までおよび始める。
「心ちゃんが可愛いのは認めるが、そんな事まで心配してるのか?」
ハハハっと龍二は可笑しそうに笑う。
「どこで誰に恨みを買ったっておかしく無い世の中だ。」
「お前はな。出る杭は打たれるだ。目立つ奴がやたら動くと要らない恨みを買うもんだ。」
「原因は俺か…。
で、誰だったんだあのバイクの男は?」
そこまで分かってて泳がせてたのか…と、龍二は蓮の大物ぶりに舌を巻く。
「泳がせて出方を見ていた。龍二が動いてくれてる事には気付いてたからな。俺が出る幕が無かっただけだ。」
「良い部下を持って良かったな。」
龍二は自分を蓮の部下だと蔑み言う。
「お前を部下だと思った事は一度も無い。俺とは切っても切れない兄弟みたいなもんだろ。」
なるほど、そのポジションを認められていたのかと龍二が嬉しそうに笑う。
「で、本題に入るけど。
奴は、村上正明32歳。名前聞いてもピンと来ない?」
「さぁ、分からないな。」
「蓮の気にも止まって無かったって事だな。
そいつは何年も音楽をやっていてメジャーになるのを夢みてだ男だ。オーディションで蓮と同じようにデビューをしたかったらしい。
かなり借金して衣装やら学校やらに金使って、そのオーディションに賭けたがまんまと落ちて、蓮に対しての逆恨みだけが残った。」
「勝手だな。
恨むなら俺を選んだ社長を恨め。」
事務所のニーズにただ蓮の歌が合っていただけで、才能だとか運だとかその辺の事が絡んだとしても、逆恨みも大概にしてくれと怒りを覚える。
「まぁ、お前自身は自分を殺しニーズに合わせる努力をしたんだろうが、周りから羨まれるほどの才能に溢れた奴に見える訳だから。
しかも、生まれ持ったカリスマ性とその容姿には誰が羨み嫉み憎む事は容易い事だよ。」
「それに週刊誌じゃ、人を人とも思わないオレ様で、傍若無人に振る舞って、沢山の女を泣かせてる風に書かれてるから敵も増える訳だよな。」
はぁーと蓮は深いため息を吐く。
北條蓮は作られた虚像に過ぎない。
本人さえもそう思ってこれまで蓮を演じて来た訳だから、北條蓮と言う人間が、知らぬところで独り歩きしている感覚を今まで感じていた。
それはまるで他人事のようで、その方が生きる上で楽だと思っていたから、今まで訂正する事もしてこなかったのは自分のせいだ。
これもツケが溜まったせいだな。と、蓮は思い頭を抱える。
だけど、これからはそうはいかない。
守りたい人、大切な家族がいる。もう独りでは無い。
俺のイメージが独り歩きして傷付くのはもう、俺だけでは無いんだ。