この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
フワッと遠慮がちに、蓮が心菜を後ろから抱きしめる。

「お腹、少しだけ触っていいか?」
再会してからずっと気になっていたその存在を、出来れば実感したいと蓮は思う。

「少しぽっこりしてるだけで、まだ小さくて性別も分からないくらいなの。」
俯きがちに心菜が言う。

蓮はそっとパジャマ越しに心菜のお腹に触れる。少しだけ、蓮の大きな手が震えているように感じるから、心菜も緊張がピークで身体を強張らせる。

「不謹慎かもしれないけど…
このタイミングでこの子がここに宿ってくれた奇跡に感謝している。」

蓮が静かにそう言うから、思わず振り返って蓮に抱き付く。

「私も、大事な宝物を授かったと思ってるの。例え蓮さんが側にいなくても、この子がいてくれるから独りじゃないって、この子のお陰で強くなれたの。」


蓮が意を決したかのようにポツリと話し出す。

「…夢に向かって、頑張る心菜の邪魔はしないって…言っていたのに…。
その歩みを止めさせてしまった事。何よりも申し訳ないと思っている。」

ハッとして心菜は蓮を見る。
1番大事な事に気付いてなかったと思い慌てる。

「蓮さん、蓮さんがちゃんと避妊してくれていたのは分かってます。
責任だとか自分のせいだとか、1%も思って欲しく無いの。
この子が私の元に来てくれたのは、きっと天国の両親がくれたプレゼントなんじゃないかって思ってるから。」

心菜は必死になって蓮に伝える。

避妊具の避妊率は85%だ。
それなのに心菜の元に来てくれた、この奇跡に凄く感謝しているのだから。

「看護師の勉強は産んだ後だって出来ます。だけど、この子を産み育てる事は、今のこの時にしか出来ないんです。だから、お願いだから自分の事を責めたりしないで。」

「ありがとう…。」
それだけ言って蓮は心菜を抱きしめる。

心菜は思う。

蓮さんに1番に伝えるべきだったと…この4か月間きっと、ずっと自責の念に駆られていたのではないだろうか…。

「蓮さんごめんなさい。1番に伝えなくてはいけなかったのに…。逃げてしまって、蓮さんを悩ませてしまってごめんなさい。」

「心菜は何も悪く無い。
この子の存在は俺の希望でもあったんだ。心菜を繋ぎ止める唯一の光だとさえ思っていた。心菜が許してくれるなら俺の全ては報われる。」

「許すもなにも無いのに…。
ありがとうって、蓮さんにもしも会えたら1番に伝えたかったの。」

心菜が笑う。太陽のような笑顔で…。

蓮は心から安堵して、自分にかせた錘をやっと降ろす事が出来た。

お互い久しぶり深い眠りにつく。

こんなにぐっすり寝れた事は、今まで無かったんじゃないかと思うぐらいだった。
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