この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編
「心配しなくてもお前にそんな負担はかけない。龍二の役目はただ、俺の話す事を確実なものにする為に、真実だけを語ってくれたら良い。」

今まで北條蓮のスクープとして出回ったほとんどの記事は、今日会う記者の物だった事が分かっている。

それは根も葉もない噂話しばかりで、何一つとして真実は無かった。薬をやっているだとか、毎晩のように豪遊しているだとか、女性に暴力を振るうだとか、自分自身が1番憎悪を抱く男に仕立て上げられている事に怒りを覚えた。

高橋の件だって、この記者が焚き付けて事を大きくしたんだろうし、心菜や心が危険に晒された事に対しては許せないと思う。

冷静にいられるだろうか。

それすらも試されているのではないか、今日会う事さえも、実は相手の思う壺なのではないかと思う。
だけど、それを利用してこっちが手玉に取ってやる。

コンコンコン。

ノック音が部屋中に響き渡る。

「俺が出る。蓮はここで待ってろ。」

いち早く龍二が動き、蓮はそれに従い1人掛けソファに座り、相手が部屋に入って来るのを待つ事にする。

龍二の誘導で記者が1人部屋に入って来る。

俺はゆっくり立ち上がりその男を見据える。

「初めまして、北條蓮です。
本日はわざわざお呼び立て致しまして申し訳ありません。いつも俺の記事を書いている記者さんに一度お会いしたいと、この場を設けさせて頂きました。」

まずは爽やかさを演じ、相手のこれまでのイメージを崩す為、下手に出た挨拶をする。

記者は少し戸惑いを見せながら、
「初めまして。週間〇〇でフリーランスの記者をしてます村上正明です。」
相手はぶっきらぼうにそう言って、一枚の名刺を差し出す。

「ご丁寧にありがとうございます。」
俺はあくまでビジネスライク的な感じは崩さず、紳士的に振る舞い、記者をソファに進める。

そして自ら内線をして、コーヒーを3つフロントに注文する。

「ああ、紹介が遅れました。こちらは私の友人です。ご存じかと思いますが、芸能界とは無縁な男なのでお手柔らかにお願いします。」

俺に合わせて龍二も丁寧に挨拶をする。

「いくつか飲食店もやっておりますが、本職は不動産を経営してます。高遠龍二です。」
龍二も経営者としての顔をして名刺を渡している。

俺の意図に気付いたのだろうか…
昔から勘が良く、俺に沿って動いてくれる頭の良い男だ。
関心しながら龍二を見ると、確信にも似た顔をして頷くから心強く感じる。

何か意図があるのか?と、村上と言う記者が怪訝な顔をする。
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