この唄を君に捧ぐ(誰にも言えない秘密の恋をしました)続編

「あんたは思っていた以上に出来た男だ。いけすかない奴だがそれは認める。俺とあんたと手を組んでこれからは上手くやって行こうじゃないか。」

金になると見た村上がこちらの思惑通り積極的に動き出す。

そして対談形式で記事を書く為、村上に主導権を握らせる。

今までスクープによって作られた北條蓮とは遥かに違う本物の蓮の言葉で、ありのままを話す。

「何故、貴方は真実を話そうと思ったのですか?」
村上の問いに俺は率直に答える。

「今まで北條蓮のイメージが一人歩きして、気付けば自分とはかけらなれた人物になっていた事に違和感を感じ始めたんです。
偽りでは無い生身の自分で生きたくなった。
俺は特に秀でた人間だと思った事もなければ、ごく普通の人間に過ぎない。
その事でガッカリされる人がいたとしても構わない。
俺は俺を取り戻し、俺に関わる全ての人を幸せにしたいと思っています。」

自分自身の言葉で語った話しは嘘偽り無く、結婚して子供が産まれた事にも話しは及んだ。

そしてかけがいのない家族を守りたい事、家族の幸せを夫として父として願っていると言う事も全て隠すさず語る。

もし、人々のイメージが180度変わりファンが減ったとしても構わないと言う事。それでもこれからも曲を紡ぎ、微力ながら人々の力になりたいと思っている、と言う気持ちを伝え話しを締めくくる。

後は村上が記事に皮肉を込めて書き足してくれたら、それこそこちらの思惑通りだ。


本来なら名誉毀損で訴える事だって出来るし、高橋を焚き付けた件に関してだけは、一生許せないし怒りも冷めない。

だが今まで、野放しにし、好き勝手書かれても何の対処もして来なかった自分に1番非があるのだ。

この事を胸に刻み、怒りと共に歩き続けるしか無い。

俺はそう思い、それを自分の戒めにする事を決意する。

賽は投げられた。

後は一人一人の心情に託される。
今後、北條蓮と言う歌手は、その人々の感情でどうとでもなっていくだろう。

それでいい。

俺自身が商品でありプロデューサーでもあるんだ。
北條蓮はこれからも世間に晒されながら、曲に想いを込め歌い続けるしかないんだ。
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