占いとは当たるものらしい
間抜けにも一音発したまま固まった。
キスしたいって、誰と?
私と?
いやいや、きっと冗談……。

「キス、していいですか」

私の返事など待たず、テーブルの上に左手をついて身を乗り出してきた課長が、右手で私の顎を持ち上げる。
レンズの向こうで艶やかに光る瞳に魅入られ、傾きながら近づいてくる顔をただ見つめていた。
しかし唇が触れる寸前、課長が顔を離す。
なんだ、やっぱり冗談だったんだとほっとしたのも束の間。

「三津屋さん。
キスするときは目を閉じるんですよ」

「えっ、あっ」

注意されて悪い気になり、反射的に目を閉じた。
少しのあと、柔らかいものが私の唇に触れる。
ファーストキスだっていうのに私は、眼鏡をかけたままでもキスできるんだ、とか変なことを考えていた。

「今は会社だからここまでですよ」

唇を離した課長がいたずらっぽく笑い、唇に人差し指を当てる。
それを見て、顔から火を噴いた。

「三津屋さんは本当に可愛いですね。
これからが楽しみです」

課長はおかしそうにくすくすと笑っているが、パニックになった頭ではどういう意味なのかわからない。
これからって?
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