占いとは当たるものらしい
ちらりと課長席を見たら、目のあった彼がにこっと笑った。
他の女子ならそれでよろめいてふたつ返事で余計な仕事も受けそうだが、残念ながら私はそうじゃないんですよ。

私よりふたつ上、今年三十になる課長はいわゆるイケメンというヤツだ。
ニュアンスパーマのかかったミディアムヘアをセンター分け、涼やかな目元を銀縁スクエアの眼鏡がさらに引き立てる。
唇は薄いが形はよく、左下にほくろがひとつ。
しかも年下にも敬語であたりがいいとなれば、女性に限らず男性にもファンがいるって話だ。

「三津屋さん」

始業時間になってすぐに、課長が私の席まで来た。
今から打ち合わせがしたいとかいうなら、勘弁してほしい。

「今日の業務予定を教えてください」

「あっ、はい」

課長が空いている席を指すので、ふたりでそこに移動した。

「今日の予定は……」

今抱えている仕事を説明する。
見た目は地味で社内女子ヒエラルキー底辺な私だが、一応係長なんて肩書きが付いている。
今のプロジェクトでも、それなりに重要なポジションに就いていた。

「あとは今朝課長に言われた、松菱さん訪問の件ですね」

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