占いとは当たるものらしい
けれど、そんなちっぽけな理由で取り上げられた。
社畜なんだから上司の命令は絶対。
部長に逆らったら会社にいられなくなる。
だから私は無理矢理自分を納得させたのに、この人は。

「それじゃあ僕は、三津屋さんの手に取り戻してやりますよ」

課長の目には強い意志がこもっている。
それを見て、喉がごくりと音を立てた。

「……できるんですか」

「できないことは言いません。
それに僕だってあの日、部長の決定を覆せなくて悔しかったんですから」

部長の提案を課長は受け入れたんだと思っていた。
でも、本当は反対だったんだ。

「ありがとう、ございます」

プロジェクトを外された日から抑え込んでいた感情が溢れてくる。
潤んだ目を見られたくなくて、俯いた。

「僕は、別に」

私の頭を、課長が軽くぽんぽんと叩く。
それがなぜか、嬉しかった。

「そうだ。
なにかお礼、お礼をさせてください。
って、まだ決まってないのに気が早いですが」

ここまでしてもらってなにもしないのは気が済まない。
じっと彼の顔を見て返事を待つ。

「あー……。
三津屋さんとキス、したいです」

「は?」

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