月夜に1人の私を見つけて

ふう、と一息ついた大和が、雪奈に顔を向けた。


「あんなところで、何してたんです?」


そう尋ねられたが、恐怖で体が震えて、まだ声が出なかった。


声が出せないことを察した様子の大和が「…とりあえず、雪奈さんの家から先に送ってもらいましょうか。」と呟いた。


何とか運転手に雪奈の住むアパートの住所を伝えると、雪奈の家に到着するのを無言のまま待った。



少し緩んだ大和の手を、雪奈は少しだけ、握りしめた。



大和の手を離したくなかった。



大和は雪奈に手を握られたまま、タクシーの窓の外に目を向けている。


ネオン街の明かりが、柔らかく、大和の横顔を照らし出していた。


雪奈の家に近づくと大和が雪奈の顔を少し覗き込んできた。


「雪奈さん、1人で大丈夫ですか…?」


大丈夫、と言いたかったが、その前に涙が一筋、頬を伝った。



恐怖心



虚しさ



孤独感



1人になると、それらに襲われるのが容易に想像できた。



1人に、なりたくない。



それが伝わったのか、大和は雪奈の家に着くと、
運転手に代金を渡して、一緒にタクシーを降りてくれた。

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