月夜に1人の私を見つけて

手を繋いだままアパートの階段を2人で上り、雪奈の部屋に2人で入る。


玄関口に立ったまま、廊下の明かりを点けようと雪奈が壁のスイッチに手を伸ばすと、大和に後ろから抱きしめられた。


大和の体に、ここまで近づいたことはない。


彼の香水の匂いが、ふんわりと香ってきた。


大和が着ているハーフ丈のトレンチコート越しに、じんわりと熱が伝わってきた。


温かくて、心地よい。


そして

思ったより逞しい腕と、

体の硬さに反応して、

雪奈の心臓がドキドキと脈打つ。


不意に、大和の吐息が耳にかかって、更に鼓動が早くなった。


そのまま、大和の手は、優しく、ゆっくりと雪奈の頭を撫で始めた。


雪奈は、スイッチに伸ばしていた手を降ろし、ゆっくりと大和の方へ顔を向けた。


すぐ近くに彼の顔がある。


大和は柔らかく微笑むと、雪奈の体をゆっくりと自分の方へ向かせて、もう一度抱きしめてきた。


背中に回された太い腕。


そっと抱き寄せられ、自然と顔を埋めた先にある硬い胸板。


そして、雪奈の頭を再びゆっくりと撫でる大きな掌。


ドキドキと胸が高鳴って、止まらない。


でも不思議なことに、大和に頭を撫でられるとホッとしている自分もいた。

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