月夜に1人の私を見つけて
どのくらい、そうしていただろうか。
しばらくすると、大和がゆっくりと雪奈の体から離れた。
「…落ち着いた?」
雪奈の顔を覗き込んだ大和の表情は、暗闇の中ではよく分からなかったが、
優しく微笑んでいるように見えた。
「…うん。」
やっと声が出た雪奈の様子に、大和はホッとしたように「よかった。」と呟いた。
そして。
「じゃあ、俺帰りますね。」
そう言うと、大和は鍵をかけていなかった玄関扉のドアノブに手をかけ、押し開けた。
廊下にある外灯が大和の顔を照らし出す。
微笑みを湛えた彼の顔は、柔らかく、穏やかだった。
玄関の外に出た大和は、雪奈の頭に手を伸ばすと、今度はポンポンッと、優しく頭を撫でた。
「…おやすみなさい。ゆっくり休んでください。」
そう言って大和はもう一度微笑むと、腕をひき、扉をゆっくり閉め、帰っていった。