月夜に1人の私を見つけて
「…そんなに、ショックだったんですか。彼氏と別れて。」
「え?」
雪奈が一瞬フリーズすると、大和が『図星か』とばかりにため息をついた。
「雪奈さんをそんなに悲しませるよーなやつ、別れて正解ですよ。他にいるでしょ、もっといい男。」
そう言って真っ直ぐ見つめてくる大和の視線と言葉は、何となく意味深に感じた。
「そ、そんなにすぐ他の男を見つけられるワケないじゃない。」
そもそも、そんなにモテる方でもないんだし、と言おうとしたが、やめた。
大和のことだから、どうせ社交辞令で『そんなことないです』と言ってくれるのだろうし、そんな風に気を使わせたくない。
雪奈の一言で、会話が続かなくなり、沈黙が流れた。
すると大和が急に、無言で立ち上がった。
なにか気に触ること言ったかな、と思いながら俯いていると。
「…和風と洋風、どっちにします?」
「えっ!?」
さっきまでの気まずさは、なかったことにされたようで、
急に話題が切り替わったことに思わず驚き、声が少しだけ、大きくなった。
「ドレッシングですよ。和風と洋風、どっちがいいですか?」
「えっと…洋風かな?」
「りょーかいっす。」
「あ、でも私、食欲が……」
大和は、雪奈に引き留められたのも気にも止めない様子で、ドレッシングコーナーの方へ歩いていった。
戻ってきた彼の手には、ドレッシングのボトルが握られている。