月夜に1人の私を見つけて

『お疲れさまです。無事、家まで帰れました?今日は、キレイな半月ですね!雪奈さんと一緒に見たかった。』


最後の一言に、またキュンとした自分がいた。


──社交辞令なんだから、いちいち反応しちゃダメ。


そう言い聞かせながら、返信メッセージを考えていると、また画面にメッセージが出てきた。

『今夜もちゃんと、眠れそうですか?』


メッセージを打ち込もうとした手を止める。


──眠れないよ。


心の中でそう返すと、また泣けてきた。


『ねむれない』


気付いたらそう打ち込んで送信していた。



はっと気づいた時にはメッセージは既読となっていて、新しいメッセージが届いた。


『じゃあ眠れるように、また抱きしめてあげましょうか?』


メッセージを読んだ途端、またキュンとした。


──また、抱きしめてくれるの?惨めで、哀れな、こんな(わたし)を?



また一粒、涙が溢れ、顎まで伝ってきて落ちた。


大和の優しさが、()みた。


『抱きしめて』


これが、夜中のテンションというものだろうか。


普段の雪奈からは考えられないほどの積極的な言葉が出てきた。


──また抱きしめるなんて冗談ですよ、って言われるよね、きっと。もう夜中だし。


あまり期待せずに見つめていた画面上に、表示された言葉は…



『すぐ行きます』



──え?



一瞬、目を疑う。



『ホントに?』



半信半疑でそう送ったが、なかなか既読にならない。

もうこちらに向かっているから、メッセージを読めていないということなのだろうか。
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