月夜に1人の私を見つけて
──行きます、って…ホントに来るの?
時計を見ると、もう23時を回っていた。
今から来たところで終電の時間だけど…二宮くん、泊まるつもりで…?
かぁぁ、と急に顔が熱くなった。
付き合ってもいない相手の家に泊まる、だなんて、彼に限って、そんな軽率な行動をとるワケがない。
しかし、こんな時間に部屋に来たところで、帰りはどうするつもりなんだろうか。
しばらく勝手に思考を巡らせていると。
ピンポーン、とドアベルが鳴った。
ドアスコープから覗くと…大和が見える。
仕事以外で大和と会う、というシチュエーションだけでも、なんだかドキドキする。
鍵をあけ、扉を押し開ける。
外灯に照らされた大和が、ヘルメットを片手に持って立っていた。バイクで来たようだ。
「ホントに来ちゃいました。」
そう言って微笑んだ大和を見て、涙がまた零れた。
彼の顔を見るだけで、ホッとしている自分がいた。
何も言えず、ただ涙を流していると、ポンポン、と優しく頭を撫でられた。
「…入っても、いいですか?」
頭を撫でながら、大和が優しい口調で尋ねてきたので、コクッと頷いた。
大和は雪奈に続いて玄関口に入り、鍵をかけた。
雪奈は、壁のスイッチに一瞬手をかけたが、やめてとりあえず部屋に上がった。