月夜に1人の私を見つけて
──結局は、自分が1番可愛いんだろうな。
他の女に目移りして。
彼女がいるのに、新しい彼女を作って。
それなのに、自分は責められたくない、なんて。
都合良すぎないだろうか。
──怜って、そういう人だったんだ。
そう考えた瞬間、
一気に怜に対する愛情が冷めた気がした。
「そっか…。それなら仕方ないね。」
気持ちが自分にないのであれば、これ以上何を言っても、時間のムダ。
なんなら、引き留めるほど価値のある男にも見えなくなってきた。
少し驚いた表情の怜に、雪奈はにっこり微笑みかけた。
「正直に言ってくれて、ありがとう。」
それからはいつもと同じように、最寄り駅まで一緒に帰った。
住んでいる場所が近いので、同じ最寄り駅。
いつもは、他愛もない会話をしながら電車に揺られているのに、
今日は2人で沈黙を保ったまま、電車に揺られて帰った。