月夜に1人の私を見つけて

「こんばんは。誘ってくれてありがとう。」


大和に近づきながら雪奈がそう声をかけると、ヘルメットの向こうで大和が目を細くして微笑んでいるのが見えた。


「こんばんは。断られたらどうしようってちょっとドキドキしながら誘ったんですけど、よかったです。」


──ドキドキ、したんだ。


先輩誘うのって緊張するよね、と笑うと大和はそのコメントには何も反応せず「雪奈さんのジーパン姿、新鮮。似合ってますね。」と褒めてきた。


「あ、ありがと…。二宮くんも、かっこいいよ。バイク似合う。」


ヘルメットを被ったままの大和の頭が、少し下を向いた。


──照れてる?


そう思って大和の顔を何となく覗いてみようとすると、
それに気付いたのか、大和が顔を上げ、持っていたヘルメットをズボッと雪奈の頭に被せてきた。


「これ、被ってください。」


初のフルフェイスヘルメット。
被り方が分からず戸惑っていると、ヘルメットに添えていた雪奈の手に、大和がそっと自分の手を重ねて、手伝ってくれた。


「ちょっとじっとしてて…」


大和の真剣な目がヘルメットの向こうから雪奈に向けられている。


ちょっとドキドキした。

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