月夜に1人の私を見つけて
「よし、おっけ。乗ってください。」
2人共バイクに跨ると、大和が雪奈を振り返った。
「しっかり掴まってもらっていいですか?じゃないと曲がったりする時危ないんで。」
「そ、そっか!こうかな?」
ぎゅ、と大和のジャケットを握ってみたが「違う。こう。」と言って、大和が雪奈の手を掴んで自分の腰に回した。
ぴったり密着する形になり、大和の広い背中に自分の体が重なっている状況に、ドキドキした。
「このくらいじゃないと振り落とされちゃいますよ?」
「え、ヤダ。振り落とされたくない。」
「じゃあ、もっと俺にしがみつくくらいが丁度いいと思います。」
「そんなに危ないの!?あ、安全運転でお願いします…。」
「もちろん。」
ヘルメットの向こうの大和の目が、また少し細くなった。
正面を向き、エンジンがかかると、バイクはゆっくり走り出した。
冬の夜風はかなり冷たい。
でも、大和の腰に手を回し、大和の背中の広さを感じながら、ドキドキして、顔が火照りっぱなしで。
手袋をしている指先は冷たいのに、ヘルメットの中の顔はずっと熱かった。