月夜に1人の私を見つけて
「お待ちどおさまー!烏龍茶2つと、茄子の煮浸しと、焼鳥盛り合わせね。あと、オマケのうまうまキャベツと、ほうれん草のゴマ和えね。」
女将さんが、元気よく配膳するのを「ありがとうございます」と言いながら眺める。
「こんなにオマケしていただいていいんですか?」
山盛りのキャベツと小鉢に入ったほうれん草を見つめながら、雪奈が尋ねると
「いいのいいの!美味しいキャベツとほうれん草がいっぱい入ってきたから、みんなに食べてもらいたくて。それに、いつも1人でウチにくる大和くんが、珍しく女の子を連れてきてくれたから、今日はサービスしたくてねぇ!」
あははっ!と笑いながら、雪奈ににっこり笑いかけると「ごゆっくりー!」と言って女将さんは他の席へ料理を運んでいった。
「そんなによく来るんだ?ここのお店。」
雪奈がそう尋ねると、大和は「まぁ、そうですね。」と呟いてから雪奈に目線を向けた。
「連日残業ってなると、飯をテキトーに済ませがちなんで、たまに平日夜とか休みの日もここに来て、まともな飯を食いたくなるんですよね。」
「わかるー。私も、疲れてると、平日の夜どころか休みの日すら、自炊したくないなぁって思うもんなぁ。…お料理、どれも美味しそうだね!冷めないうちに食べよう。」
雪奈がそう言うと、大和がフッと微笑んだので「ん?なに?」と尋ねてみた。
「いや、雪奈さんが料理見て『美味しそう』って言ってくれたんで、連れてきてよかった、と思って。」
「あ、そうだね。素直に美味しそうって思っちゃった。」
「それでいいんですよ。自然と食欲わいてるならよかったです。じゃあ…」
烏龍茶の入ったジョッキを大和が持ち上げたので、雪奈も慌ててジョッキを持った。
「雪奈さんの、食欲復活を祝って!」
「すごいものを祝われてる笑」
「いいんです、めでたいのは間違いないから。あ、あと。」