月夜に1人の私を見つけて
「今日は誘ってくれてありがとうね!久々にまともな食事ができたって感じ!」
雪奈のアパートに到着し、バイクから降りた雪奈が満足そうにそう言うと、大和は「よかったです。」と言ってから「今日は眠れそうですか?」と尋ねてきた。
「んー、昼過ぎまで寝てたし、まだ眠たくないかなー。」
雪奈がヘルメットを外して、大和に渡しながら答えると。
「…今日は『抱きしめて』って、言ってくれないんですか?」
少し拗ねたような口調でそう言った大和に、雪奈は慌てて言葉を返した。
「え!そ、そんな…。しょっちゅうしてもらうワケにもいかないよ…。」
「なんで?」
「な、なんでって…後輩にそこまで気を遣ってもらうの、悪いし…。」
そう言うと、ヘルメットを被ったままの大和は顔を逸らし「…分かりました。」とだけ、ポツンと呟いた。
「じゃ、帰ります。おやすみなさい。」
そう言ってバイクに跨ってエンジンをかけた大和を見つめていると、急に寂しさが込み上げてきた。
「や、やっぱり…!」
雪奈の声に反応した大和が、雪奈に顔を向けた。
「ちょっとだけ、抱きしめて欲しい…かも。」
自分で言っておきながら恥ずかしくなり、俯いていると、
バイクから降りた大和に思いきり抱きしめられた。
いつもより、大和の体と密着している。
一気に心拍数が上がり、顔が火照った。