月夜に1人の私を見つけて
更待月―ふけまちづき―
怜にフラれて、1週間が過ぎようとしていた。
雪奈はいつも通り朝の身支度を済ませて、出社する。
昨日も、怜とのことを思い出して、1人、布団の中で泣いてしまった。
そのせいで、目元は多少腫れてしまったが、メイクでなんとか誤魔化した。
顔を近づけさえしなければ、目元が腫れていることに気付く人は、誰もいない…はず。
「雪奈さーん!おはようございまーすっ!」
電車を降り、トボトボと歩いていると、後ろから元気な声を掛けられた。
この声。誰なのかすぐわかる。
「二宮くん、おはよう。」
追いついて、自分と横並びになって歩く後輩に顔を向けて、朝の挨拶をする。
そしてそのまま、本社が入っているビルを目指して、2人並んで歩いた。
天気の話から始まって、仕事のちょっとした愚痴や悩みをお互いに話す。
そして最後は、大和がちょっとした笑い話に変えてくれる。
年下なのに、一緒にいて楽しくて、頼りになる男の子だ。