月夜に1人の私を見つけて
ロールキャベツは上出来だった。
ほっこりした気分になれた日曜日が終わると、月曜日からは怒涛の繁忙期ラッシュが始まった。
社内では内線がひっきりなしに鳴り、メールもバンバン届く。
あっという間に1日1日が過ぎていった。
──週末、元気をチャージしたはずなのに、もうクタクタだ…。
週半ば、水曜日の夕方、一通り業務を終えてから一息つく前に、思わず机に突っ伏した。
そのままウトウトしそうになったが、頭を振って眠気を振り払う。
──コーヒーでも飲んでちょっと休憩しようかな。
財布を持って立ち上がり、執務室を出ようとした途端、入ってこようとした人にぶつかりそうになる。
「っと…すみませ…あ、雪奈さん。」
「二宮くん!」
帰り支度を済ませた様子の大和が、ちょうど営業2課の執務室へ入ってこようとしているところだった。
「ごめんね、ちゃんと前見てなくて。」
「いえ、俺こそ。…雪奈さん、もう上がります?」
「ううん、まだだよ。ちょっとコーヒーでも買おうかなって。」
「お。じゃあ俺も行こ。」
「?…2課に用事あったんじゃないの?」
「用事済みました。」
「そう?」
疲れでぼんやりした思考のまま、そう返すと、大和と並んで非常階段で1つ下の階へ向かうことにした。