月夜に1人の私を見つけて
二宮大和。今年入社したばかりの新人。
身長は175センチあるかないかで、高身長とまではいかないが、
アイドルのような甘いマスクと、
時々見せる無邪気な笑顔が、
社内の女性たちを虜にしていた。
入社当初、雪奈は彼の教育担当をしていたが、あまりの手際の良さと、営業のウケの良さから、
入社後3か月で新人に課せられている売上目標を達成し、
他の新人より数か月早く、独り立ちが許された。
まさに『期待の新人』の彼は、雪奈が教育担当から外れた今でも、よく声を掛けてくれる。
「さすが、二宮くんだな。」
ボソッとそう呟いた雪奈の声が大和にも聞こえていたようで。
「え?何のことです?」
と無邪気な笑顔でそう尋ねてきた。
「いや、だって…今はもう別フロアでお互い仕事してるわけだし、挨拶してくれるだけで十分なのに、こんな風に今でも会話してくれるから。さすが売れっ子営業マンは違うよね。人付き合い、大事にしてるから偉いよ。」
雪奈が笑ってそう言うと、
大和は「それは相手が雪奈さんだからなんだけど…」と呟いた。