月夜に1人の私を見つけて

ショルダーバッグにスマホをしまい、地下通路から地上へ続く階段をのぼる。


──せっかくだし、イルミネーションくらい見てから帰ろうかな。


地上へ出ると、街路樹を縁取ってキラキラと光るオレンジ色のイルミネーションが、歩道に沿って続いていた。


所々にトナカイやサンタ、雪だるまを象ったイルミネーションもある。


──きれい。

カップルが行き交う中、1人でイルミネーションを眺めながら歩道を歩く。


楽しそうに笑い合うカップル。


寄り添い合いながら歩く幸せそうなカップル。


彼らを見ているうちに急に寂しさが込み上げてきた。


じんわりと視界が滲み、イルミネーションのオレンジ色は皮肉にも、涙でますますキラキラと輝いて見えた。



惨め



そんな言葉が浮かんできて、胸がキュッと締め付けられる。


こぼれてきた涙を指先で拭っていると、イルミネーションの先に月を見つけた。


新月になる前の、折れてしまいそうなくらい細い月。


イルミネーションのキラキラに負けてしまいそうなほど、月の光は弱々しく感じられる。



──なんだか私みたいだな。



キラキラ光るイルミネーションは、幸せそうなカップル達。


対して、ポツンと1人、遠くの方で弱々しく白い光を放つ月は、まるで今の自分を表すようで。



見つけて。

ここに1人でいる私を。



気付いて。

ここに1人でいる私に。


そんな小さな願いも、圧倒的な輝きを放つイルミネーションやカップルを前に、消えてしまいそうだ。



その時。


「雪奈?」


後ろから声をかけられた。


振り向くとそこには…
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