月夜に1人の私を見つけて
大和からの視線からワザと目線をそらしていると、勝手に涙がこぼれてきた。
指で軽く涙を拭う。
「…どうして泣くんですか?何か悲しいことがあったとか?」
大和が心配そうに雪奈の顔を見つめながら問いかける。
雪奈は、ちらっと大和に目線を向け、また目をそらしてから、ようやく声を発した。
「彼女さん、待たせたりしてない?大丈夫なの?」
「彼女?」
大和が目を大きくして驚いた表情を見せる。
「なんのことですか?」
「さっき、見ちゃったの。うさぎのキャラクターの…ほら、そのお店の」
雪奈は大和が持っている、うさちゃんのお店の袋を指さしながら、言葉を続けた。
「そのお店の前で、彼女さんと一緒に、うさちゃんのペアのぬいぐるみを見てたでしょ?」
雪奈がそう言うと、大和はようやく納得いったという表情を雪奈に向けた。
「あ、見てたんですね。あいつ、妹です。」
「…えっ!?」
びっくりした表情の雪奈を見て、大和は頷いた。
「雪奈さんに会う前に、ちょっと買い物に付き合ってもらってて。」
なるほど。
あの距離感は、妹だからこそ、のものだったのだ。