月夜に1人の私を見つけて

大和からの視線からワザと目線をそらしていると、勝手に涙がこぼれてきた。


指で軽く涙を拭う。


「…どうして泣くんですか?何か悲しいことがあったとか?」


大和が心配そうに雪奈の顔を見つめながら問いかける。


雪奈は、ちらっと大和に目線を向け、また目をそらしてから、ようやく声を発した。


「彼女さん、待たせたりしてない?大丈夫なの?」


「彼女?」


大和が目を大きくして驚いた表情を見せる。


「なんのことですか?」


「さっき、見ちゃったの。うさぎのキャラクターの…ほら、そのお店の」


雪奈は大和が持っている、うさちゃんのお店の袋を指さしながら、言葉を続けた。


「そのお店の前で、彼女さんと一緒に、うさちゃんのペアのぬいぐるみを見てたでしょ?」


雪奈がそう言うと、大和はようやく納得いったという表情を雪奈に向けた。

「あ、見てたんですね。あいつ、妹です。」


「…えっ!?」


びっくりした表情の雪奈を見て、大和は頷いた。


「雪奈さんに会う前に、ちょっと買い物に付き合ってもらってて。」


なるほど。

あの距離感は、妹だからこそ、のものだったのだ。

< 69 / 81 >

この作品をシェア

pagetop