月夜に1人の私を見つけて
「え?何か言った?」
「いえ、別に。…それより」
そう言うと、大和は急に、雪奈の方へ顔を近づけた。
驚いた雪奈は、思わず立ち止まる。
「ん?何?」
きょとん、とした表情の雪奈に、大和が真剣な表情で尋ねる。
「…目ぇ腫れてません?何かありました?」
射抜くような目の大和に…見事、見抜かれた。
「な、何もないよ?寝不足だからかなぁ?」
──さすが、二宮くん。観察力すご。
そう思いながら、はははっと笑って誤魔化してみたが、大和は納得いってないようで、まだ真剣な表情のままだ。
「絶対何かあったでしょ?」
「ないないない。」
「ウソだ。なんとなく笑った顔も元気ないですし。無理して笑ってる感じだし。」
「そ、そう?ごめんね…。」
「あー、アレですか。彼氏にフラれたとか?」
最後、ちょっと冗談っぽく、いたずらっこのような表情でそう言われた。
う、と一瞬詰まった雪奈を見て、
大和がすかさず「え、ホントにフラれたんですか?」と、畳み掛けてくる。
雪奈は慌てて反撃した。
「あんまり人の詮索ばっかりしないの!さ、今日もがんばろ!」
拳を握って小さくガッツポーズをしてみせると、再び雪奈はビルを目指して歩いた。さっきより、少し、歩くスピードが速くなった。