月夜に1人の私を見つけて
「そ、そうだったんだ…」
「もしかして、俺に彼女がいるって思って泣いてくれたんですか?」
雪奈の顔を覗き込んでいる大和の表情が嬉しそうだ。
「もしかして、急用できたっていうのも、ショック受けて会えないと思ったから、とか…?…自意識過剰かな?」
そう言った大和に、雪奈はホッとして涙を流しながら頷いた。
「え?どっち??彼女がいると思ってショック?それとも…俺が自意識過剰ってこと?」
最後の一言にクスクス笑いながら、雪奈は大和と目線を合わせた。
「彼女…いると思って…ショックで…」
そう呟いた途端、大和はにっこり笑い、そのままやさしく、雪奈を両腕で包み込んだ。
大和の匂い。
大和の温かさ。
大和の優しさが、全身から伝わってくる。
「嬉しい。雪奈さんが、俺を思って泣いてくれるなんて。」
雪奈の頭の上の方から、大和の声が優しく降ってきた。
そして、大和は少しだけ腕の力を緩め、雪奈から体を離すと、
雪奈の両肩に手をかけたまま「雪奈さん」と声をかけた。